交換の基本物資である食糧が、ジャンマダンから影を潜めると(さらに闇商売化して)、すぐに食糧と工業製品の交換に影響が出て、工業製品の大量在庫が出始めた。

ジャンマダンの流通は滞った。毎日の暮らしをジャンマダンでの稼ぎで維持してきた大多数の朝鮮人は、生活に直接的な脅威を受け始めたのだった。
国家による無謀な強制的配給復活の目論見によって、経済事情はまた悪くなった。
先軍政治の実態が、個人の蓄財運動と結びついていることを考えるとき、このような国家の政策が、いったい誰の経済的利益のために実施されたのかを、よく見なければならないだろう。今後、必ず解決しなければならない課題に違いない。

とにもかくにも、見せかけだけの経済正常化のスローガンは、もはや誰にも信用されなくなり、ただの無意味な政治的標語のようになり果ててしまった。それが経済の話であると、耳を傾ける人間は誰もいなくなった。
(つづく)

注1 六か月土地 工場などの企業に食糧の現物配給がままならないため、農場の土地などの耕作権を企業に移管し、「配給したことにする」制度。
およそ六か月分の配給に該当する生産が見込める土地の耕作権を、多くの企業に移したことから「六か月土地」と通称していた。地域によって呼び方は異なるかもしれない。

収穫のうち一定量を国家に納めれば、あとの分配は企業の裁量に任された。
二〇〇五縲恣Z〇六年に実施されたとき、突然耕作権を与えられた企業の中には、抱える労働者が一生懸命農作業をして、本来の規定配給量をはるかに上回る収穫を上げた所もあったという。多くの工場、鉱山は稼働しておらず、労働者たちは実質的に一時的に「自作農」になったのであった。
どういうわけか正確には不明だが、二〇〇七年になって、多くの土地がまた回収されて協同農場に戻されており、少なくない企業で「六か月土地」制度は終わったようである。

注2 糧政 北朝鮮の食糧配給の根本的な思想は、「食糧をもって統治する」である。つまり「食べるものを与えるから言うことを聞け」ということである。

食糧配給を司る役所のことは「糧政」と通称され、配給所のことは「糧政事業所」と言うのが正式名称である。
注3 方針対象 金正日に対し下から上げた提議書が、承認を受けることができれば方針になる。例えば、ある地方で水力発電所建設問題を提議して方針になれば、それを方針対象と呼ぶ。
このような対象は外国からの支援食糧配給の優先権を付与される。
注4 組織に配給された物資を、ジャンマダンの値段が高いときに売れば、もとはタダなので濡れ手に粟である。

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