二つ目は、権力に取り入った者たちだけが「海外労働の恩恵」に預かれるという考え方が固定してしまっている点だ。これらは、もちろん保守的で遅れた判断・考え方に過ぎないのだが。
(健全な生産労働環境を育成するために)強大国の対朝鮮政策も変わってほしいと思う。
(朝鮮を変えようとするなら)独善的な政治方法や軍事的方法以外にも、もう少し現実的で効果のあるやり方を見つけることができると思う(編集部注 日本や米国ブッシュ政権の政策を指している)。

今後、我が社会が動いて行く方向を考えるときに見落としてはならない重要な点がある。朝鮮の現実は、人々みんなが「ジャンマダン経済人」であるという点だ。
国の外面は先軍政治だが、それでもみんなが軍人というわけではない。また、先軍運動を進めようとする連中の実際の原動力は「個人蓄財」である。今、朝鮮の人々はみんな、一にも二にも自分の金儲けだけに没頭している。

出勤したはいいが、やることもなく無駄に時間を過ごしている労働者たち。ほとんどの企業所で月給も食糧配給も出ない状態が今も続いている。こんな条件で労働者がまともに生産活動に精を出すはずがない。(2003年9月両江道恵山市アン・チョル撮影)
出勤したはいいが、やることもなく無駄に時間を過ごしている労働者たち。ほとんどの企業所で月給も食糧配給も出ない状態が今も続いている。こんな条件で労働者がまともに生産活動に精を出すはずがない。(2003年9月両江道恵山市アン・チョル撮影)

 

空回りする外からの投資
石丸:朝鮮の生産労働環境のことがよくわからない。
ケ:中国からの援助によってできた大安(テアン)親善ガラス工場をみてみよう。
主原料の一つに、炭酸ソーダがある。ガラス生産のために多量に必要なのだが、輸入品だ。また重油も必需品だ。

中国が工場設備を提供し、一年分の生産資材まで提供してくれたが、工場を継続して運営するためには、ドル(外貨)がどうしても必要だ。生産原料や補修資材を中国や外国から定期的に買って来なくてはならないからだ。
さらにそれよりもずっと重要な問題がある。ドルで作ったこのガラスは、支払能力のない国内市場では販売しようがないという点だ。
つまり、販売まで中国など外国に依存しなければ工場の採算を取ることはできないのだ。

では輸出できるのか? 外国では工業製品であるガラスは過剰供給だろう。
この問題を解決する鍵は、企業管理方式に、市場経済原理を導入することだ。
そうすれば、中国が作ってくれたこのガラス工場の操業でも、朝鮮の安い労働力を生かすことができるだろう。今のような「労働鍛錬隊送り」の罰則制度なんかで、労働力を管理統制しても、まともに生かせるはずがない。(注2)

一方、大安ガラス工場の運営の中で、朝鮮人が学ぶことはたくさんある。一種の中国式改革も学ぶことになる。
しかしマイナスもある。すでにこのガラス工場と関連してチョウ・ミョンロク(趙明禄)(注3)が批判を受けている。
既存の南浦ナムポガラス工場を爆破破壊して(編集部は未確認)、大安親善ガラス工場を建設することには成功したが、これによって国内のガラス消費がより困難になったという。
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