このように旧来の配給システムから放り出された人たちが、市場活動にいそしみ、逆にどんどん生活水準を向上させているのだ。
さて、軍需産業である。皮肉なことに、ここは国家の重要度が高いがゆえに、従業員の生活レベルが低いという逆転現象が起こっている。
食糧配給がなまじ優先的にもらえるために(それでも出たり出なかったりだ)、工場に縛り付けられて市場に出るのも簡単ではない。出勤統制も厳しい。給料も国定の2000~5000ウォン程度で、これでは、市場で米2~1キロ買えばおしまいである。

従業員たちはこれではたまらないということで、この10年ほど、どこの軍需工場でも、不正行為が蔓延している。
工場の機械や工具原材料を盗んで市場に売るなどというのは、日常茶飯事だ。平安北道朔州(サクジュ)には大きな軍靴工場があるが、ここでは、材料から接着剤、工具までを従業員たちが持ち出して、家で軍靴ならぬ一般用の靴を作って市場に売る行為が横行している(リムジンガン第2号で詳細にリポートする)。

年老いた家族に餓死者発生の報告あった江東郡のある軍需工場の場合、食糧価格の急騰で、今年に入って配給量が減らされていた。
そして4月以降さらに配給事情が悪化していく中でも、うまく市場で活動ができない家庭で、体の弱った老人の中に命を落とす人がぽつぽつ出始めている、というのが北朝鮮内部記者からの報告であった。
価格動向
1キロ当たりの市場での価格である(単位は朝鮮ウォン)。

◆5月9日 咸鏡北道清津市 会寧市
白米 2500 2200
トウモロコシ 1000 1000
ガソリン 5000 4850
1ドル 4010 3910
1元 ---- ----

 

◆5月12日 咸鏡北道清津市 会寧市
白米 4000 3500
トウモロコシ 1600 1400
ガソリン 5200 5000
1ドル 4050 4000
1元 ---- 470

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