伝染病の正体は?
現時点での限られた情報からは、北朝鮮北部地域で流行している病気が、噂は広く流布しているものの、「鳥インフルエンザ」なのかどうか確証はない。鳥から人への感染は、世界的に見ても2003年以降、数百程度と多くなく、まして人から人への感染例は、隣国の中国でも一例しかないことを考えると(隠蔽されている可能性はあるだろうが)、「鳥インフルエンザ」の可能性高いとはいえない。

正体のわからない伝染病の発生によって恐怖心が増幅し、怖い病気の代名詞のようになっている「鳥インフルエンザ」説が、瞬く間に拡がったのだと思う。
しかし、何らかの伝染病が流行しつつあるのは確かである。
一つの可能性として中国で今年に入って流行り始めた「手足口病」EV71(エンテロウイルス71型)が考えられる。
(参考 http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k01_g2/k01_27/k01_27.html)

子供がよく罹る胃腸カゼの一種のこの病気は、手足に水疱ができ口内炎が現れ、38度程度の高熱が出る。それほど重い症状はないというが、今年4月に中国安徽省で19名の子供が死亡し、その後北京から東北地区に北上、5月20日頃から北朝鮮と隣接する吉林省延辺朝鮮族自治州でも子供の患者が発生している。各地の幼稚園、小学校で食器などの消毒作業が実施されている。

延辺地区では死者はまだ出ていないという。
ふたつめの可能性は、パラチフスヤコレラなど、これまでも再三北朝鮮で流行した伝染病である。
今、北朝鮮は田植え真っ盛りである。都市住民は農村支援に総動員されている。

気温が高くなるこの時期、人糞や家畜の糞で作った堆肥を運ぶため、衛生状態が悪くなり、人の移動が多くなって伝染病が発生する条件がそろう。茂山郡、会寧市などで発生した病気が、高熱、下痢、食欲不振という症状からするとパラチフスのようにも思える。だが、咳が出るという症状の報告が気になる。
伝染病の動向については今後も報告していく。

1キロ当たりの市場での価格である(単位は朝鮮ウォン)。
次のページへ ...

★新着記事