【政権が交代した5月20日の「中国時報」朝刊。陳水扁最後の夜、とは「幻の台湾共和国」最後の夜と読めなくもない】
「新幹線就任式」
沖縄から台湾に戻ったのは5月18日。四川大地震からほぼ1週間たっていた。
那覇をとびたった中華航空機はほぼ満席。大半が台湾からのツアー客である。配られた台湾の「中国時報」。一面から六面まで全面地震報道で埋まっていた。「国内」並み、というより「国内」事件としての報道態勢である。
翌々日が、馬英九総統の就任式。政権引継ぎは無事に終了。
セレモニーを台北ですませると、ご本人や国会議員・国賓(わずかではあるが)・マスコミはいっせいに新幹線に乗って南下し、高雄市内のホテルで晩餐会を催した。
東京の明治神宮で式をあげて、新幹線を借り切って全員そろって大阪の披露宴会場に移動するようなものである。もちろん異例中の異例。
台湾第二の都市、そして野党になった民進党の地盤がある高雄に対する配慮とも楔(くさび)ともいえる。そして新幹線があればこそ(所要時間約90分)の奇策であった。
民進党幹部は誰も出席しなかったが、李登輝夫婦は就任式の最後まで馬英九につきあい、新政権の誕生を祝福した。
異例の就任式から一週間。馬英九政権は平穏である。ただ庶民の感覚からすれば、台湾共和国が再び中華民国に戻ったという感慨は免れがたい。
四川地震の報道。
NHKも含めて、中国内陸部の庶民の生の様子をこれだけ身近に毎日見続けるチャンスはなかったようにおもう。
「中華」世界への不動の確信、親族への愛惜、困難とたたかう気概、声を張り上げる自治体幹部、迷彩服の兵隊さん、張り切るマスコミのスタッフ、一瞬、台湾かと錯覚するほど台湾の人たちに似ている。
もう十数年前、台湾人が大陸へ自由に渡航できるようになったとき、在台日本人もけっこうツアーに参加して中国旅行を楽しんだ。帰ってきた人が異口同音に言ったのが、海の向こうにも同じ人たちが住んでいた、というものだった(往時は台湾も大陸も同様に知っている人は少なかった)。
海峡を隔てて、同じ文化と歴史・言語をもった同じ民族が対峙してきたことを改めて思う。
中国国民党の呉伯雄主席が一昨日、中国にわたった。今日、北京では、胡錦濤主席との会談が予定されている。
両岸の政権与党代表が公式に会談するのは、これが初回となる。また中国共産党と中国国民党の主席同士が会うのは、1945年以来(毛沢東と蒋介石)のこととなろうか。
その他のニュース
・民進党に初めて女性党首誕生。蔡英文。法学者、前行政院副院長。
・総統の座を退いた陳水扁一家(妻・婿・婿の父)は本人を含めて、逃亡の恐れありとして、監視下におかれた。これから公金流用、インサイダー取引などの罪で法の裁きを受けることになる。
・5/28からガソリン価格リッター約15円の値上げ。これから抑えられてきた公共料金が怒涛のように上がるらしい。