多様な民族のすがた(下)
※お断り ミャンマー(ビルマ)入国取材の安全を期して、宇田有三氏は「大場玲次」のペーネ ームを使用していましたが、民主化の進展に伴い危険がなくなりましたので、APN内の記事の署 名を「宇田有三」に統一します。
【写真:ビルマは英国の植民地であったということは知られている。だが、ビルマ南方地域は一時期、ポルトガル人に占領されていたことがある。その末裔が今もひっそりと、ビルマの第2の都市マンダレー郊外に住んでいる。宗教はキリスト教(カソリック)で、目の色や顔形は西洋人だが、ビルマ語を話し、生活はビルマ人と同じである】
さて、ビルマにはいくつぐらいの民族が存在しているのだろうか。
ビルマ軍事政権によるとその数は135にも及ぶという。
軍事政権がその力の支配をゆるめないのは、「これほど多くの民族をまとめ上げるのは今のところ、軍部しかない。さもないと旧ユーゴスラビアのように国家分裂を招いてしまう」と説明している。
だが、この区分けは、それぞれの民族をどう位置づけるかによって変わってくる(民族の数は45前後だとする人もいる)。
かつて、武装闘争を続けるカレン民族の幹部から次のように指摘されたのを憶えている。
「ビルマには多くの民族がいるが、たとえば、『言語の違い』によって民族が違うとなぜ言い切れる? そんな西欧的な考えや価値観で我々を判断して欲しくない。カレン自体も細かく分けれているが、カレンはカレンで1つなんだよ。数は少ないが、我々にも我々の考え方や価値観があるのだよ」
実際私も、カレン州で会ったカレン人同士がカレン語ではなくビルマ語で会話をしている場面に出くわしたことがある。
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