咸鏡道「将軍様はすごく年をとった……」1
取材リ・ジュン
2007年11月、記者リ・ジュン(李準)は、咸鏡道の住民たちと首脳会談関連の取材を行った。
取材に応じたチンさんは三〇代労働者の男性、パクさんは五〇代医師の男性、リさんは三〇代の農民の女性だ。
チンさんとパクさんは同じ場所で、リさんとは別の機会に取材した。以下はその内容をそれぞれ整理したものである。
老けたのは頭の使い過ぎ?
リ・ジュン:盧武鉉というのが、今回来た韓国の大統領の名前だということぐらい人々は知っていますよね?
チン:ええ、事前にそんな教育を受けましたから……。
まあ、盧武鉉が来たからと言って、何か変わったこともないし、人民たちが喜ぶようなこともない。
「統一するんだ」なんて言い始めて何十年経ちましたか。政治家たちが口先で言ってるだけだろうって思うようになってしまいました。
リ・ジュン:それでも、盧武鉉が来てるのをテレビで見て、みんな何か言ってたでしょう?
チン:まあ、別に大したことないって感じかな。テレビなんて見るヒマもないし。
第一、電気が来ないとテレビも見られないでしょ? それに、放送で流しても誰が聞きますか?(全世帯に官営の有線放送があるが、人気がない。「有線放送を聞かなくなった住民たち 下」参照。)
リ・ジュン:それじゃあ、ニュースも聞かなかったの?
チン:ニュース? 電気を送ってくれれば座ってテレビも見ますけどね。
リ・ジュン:先生は、テレビニュースを見たでしょう?盧武鉉が来た時。
パク:握手してるのくらいは見たかな。
人々は何も期待なんてしないよ。前に金大中が来たけれど、帰ったあとに何もなかったし。
今では、統一がどうのこうのとか、支援がどれだけ来るのと言われても期待しない。期待して裏切られたことがどれだけたくさんあったか。
リ・ジュン:盧武鉉が来てから平壌では配給が出たそうです。ひと月分配給して、これからは市場に行くなって統制始めたそうです。
パク:私たちは、まあ、北のはてに住んでるから。
リ・ジュン:わが将軍様の顔色が以前より良くない、何かの病気ではないか、と言う人がいるんですよ。医者の先生から見てどうですか?
パク:確かにすごく老けましたね。私から見てもそうですよ。
あのお歳の割にはとても老けて見える。
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