朝鮮の農民の疲弊ぶりは目を覆いたくなるほどだ、と内部の記者たちは口々に言う。(2007年10月末、黄海北道の農村で リ・ジュン撮影)
朝鮮の農民の疲弊ぶりは目を覆いたくなるほどだ、と内部の記者たちは口々に言う。(2007年10月末、黄海北道の農村で リ・ジュン撮影)

 

咸鏡道「将軍様はすごく年をとった……」2 取材リ・ジュン
なんの心配もなく農業で食べられたら
※以下は同じく二〇〇七年一一月に別の場所で農民女性リさんを取材したときのものである。
リ・ジュン:首領様(金日成)時代のように、農民として将軍様に言いたいことがあれば、願いをひとつだけお伝えすることができるとしたら何を言いたいですか?
リ:今では心がすっかり萎縮してしまって、何かを申し上げるなんて気もおきませんが、ただもう、肥培管理(注1)でも何でもいいから、やりたいように畑仕事をして、ただ心配なく食べられるようになれば。

本当に、これが最小限の願いです。
秋になると、もう穂が実る九月中旬になる前から本当に神経質になるんです。毎年やり方が変わるから。
ある時は「軍糧米を取られるらしい。黄海道、平安道の収穫がだめだったから」っていうし。

とにかくわが国は軍隊優先でしょう。人々があまりにも教化されてしまってるから、軍糧米を第一に考えるようになってしまったんです。
でも、農民も自分の家族を食べさせないといけない。軍隊も重要だけど…。
「肥培管理制なのに軍糧米を取られたら、何にも残らないだろう。軍量米が今度は何トンだって…」という話がしょっちゅう出回るからとても不安なんです。(注2)

リ・ジュン:「肥培管理制は絶対に崩してはいけない」っていう大統領(注3)命令が下ったらうれしい?(笑)
リ:ありえませんよ、そんなこと。
人民軍も将軍様の軍隊だし、人民も将軍様の人民だから、どっちかを殺して、どっちかを生かすとか、そういうのはないでしょう。

リ・ジュン:聞いた話なんですが、将軍様が「私はそんな軍隊は持っていない」って言っているそうですよ。(食事もとれず腹ぺこで不良行為に走り、軍隊の評判が悪いため、金正日がこう言ったという噂がある。「人民軍は栄養失調続出」参照。)
リ:そんなこと滅相もない。多分内々の話でしょ。

リ・ジュン:まだ「私にはこんな農民必要ない」と言ったことはないんですけどね。
農業が天下の基本なのに、農民たちのちっぽけな願いぐらい叶えてあげないと。
「軍隊と分け合って食べるのはよい、しかし、もうこれ以上ひどいやり方に変えないで」というのがあなたの言い分かな?
リ:はい。
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