むしろ事故のない日が珍しいぐらいだった。
ある時は、坑道の一番奥でホッパー(石炭を漏斗状の装置に集める作業)をしていたところへ、天井の岩盤がぐらついた拍子に大きな岩が落ちてきて、たくさんの人が下敷きになった。
それまであまりにたくさんの死体を見てきたせいか、血だらけの死体を処理していても、凄惨だという感じがしなかった。

こんな生き地獄のような所へ来て、共に肩を寄せ合って働いた仲間のことである。人ごととは思えない。
彼と私とは紙一重の運命だった。ただ石が私の上には落ちてこなくて、私が死ななかったというだけだ。
死んだ者のことを、「管理所」の人々はこう言う。
「やつの運命だな」と。

死んだ人の葬儀に、家族はほとんど関与できない。
事故で誰かが死ぬと、親が遺体に対面しないうちに埋葬してしまう。
親が遺体を見たいと言えば見せるとはいうが、たいていの場合はそのまま埋めてしまう。
頭がつぶれているなど、遺体の状態がひどいせいか、あるいは、地獄のような「管理所」の苦労からやっと解放されたと考えるのか、親も概して遺体を見ようとはしない。たいていは仲の良かった者が処理する。

一般社会では死後三日置いてから葬儀を行うという風習があるが、ここでは、「管理所」の指示どおり、死亡現場から墓地に直行するだけだ。
病気にかかったり、老衰で死んでも、特に葬儀は行わない。
「管理所」から支給される、カンナがけもしてない、ただの板切れで棺を作り、死体を入れ、埋めたら終わりだ。
条件の過酷な「管理所」では炭鉱事故が多いため共同墓地がある。

だがそれは、一般の人が考えるような共同墓地ではない。ただ、あちこち適当に死体が埋められているだけだ。
墓とも呼べない、ただの死体埋め場である。
(つづく)
注1 朝鮮で咸鏡道の人々は、独特の荒っぽい話し方のため、「ソルラ」、「ハラックイ」などと呼ばれる。

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