朝鮮男性の大半は喫煙者。必需品のタバコは簡単な賄賂として効き目がある。露天で中国製タバコを売る女性。(2003年9月両江道恵山市 アン・チョル撮影)


北倉(プクチャン)18号管理所出所者の証言 9

「隊内民」たち
さて、わが家のあの冷凍機はどこに売られたのか?
ジャンマダン(市場)は「管理所」の中にはない。店といえば、軍商(軍人商店)があるにはあって、外の市場と連動しているため値段も高いが、そこそこ良い品物も入って来ている。

ところが、「隊内民」たちといえば、配給と焼畑を耕して生計を維持するのが精一杯なので、金がなくて買い物をする余裕はそんなにない。一方、平壌から新しく送り込まれてきた「移住民」たちは、現金や食糧は持ち合わせていなくても、家財道具などは結構いい物を持っていることが多い。わが家の冷凍機も、「隊内民」が安値で買っていった。
いくら偉そうにしている「隊内民」でも、今の時代、一歩外に出れば、高い金を出さなければ物を買うことができない。それよりは「移住民」とうまくつきあって持ち物を安く買い取ったほうが得なのだ。

※一般社会で外貨を使っていなかった時代には、「管理所」の「隊内民」も、配給制度の恩恵でいい暮らしをしていたそうだが、それも昔の話である。
世の中全体が市場経済化していく一方で、がたがたになった配給制度で暮らしていかなければならない「隊内民」たちの生活は苦しいという。これまで刑の執行人として権力をふりかざし、「移住民」の財産を取り上げて売り飛ばしていたのに、今では様相が変わってしまった。
朝鮮が人権問題で世界から糾弾されるようになった上に、証言者によれば、二〇〇六年の「18号管理所事件」(詳細は次回以降で後述)をきっかけに、中央党の検閲が「管理所」に入るようになった。
新しく「移住民」が入って来ても、何でもかんでも没収することはできなくなり、むしろ「移住民」の顔色を伺うようになったのだという。

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