チョン ジャンマダンの米を一〇〇%配給用に回せれば、食糧配給は可能でしょう。コメ自体の絶対量が不足しているわけではないから。だけど、それをやる力が国家にあるか? まあ、国家には絶対無理だろうね。期待するのも馬鹿げているよ。

クァク:国家の外貨調達会社や、大規模な個人の米商売人、それからそこにぞろぞろくっ付いている小売り人にいたる連中の手中にあるすべての米を国家が回収して、国家の倉庫に入れなければならない。それができれば市場をなくせますよ。

チョン:そうするには、国家が握っている金と物資をすべて投入しないとな。ところで、そんな「国家」なんか、今どこにあるんですかね? もはや社会主義陣営なんて消え失せてしまったのに……。

農業
シム:農業がうまくいったらどうでしょう?
チョン:ふん! 農業はどうなってしまった? 一町歩当たりの収穫高のノルマがあるだろう。広さによって五トン、一〇トン生産しろと計画を与えるよな。ところが農場は五トン生産したら四トンと報告して一トンは隠匿するんだよ。

この隠匿した分はどこに行くのか。それが問題だ。国家は協同農場制度を運営しているが、農業するにはトラクターでもって畑を耕し、鍬で土をならす。田植えの時に使う機械の油など一切の営農費用は本来国家が負担すべきなのに、それが工面できていないだろ。それで、農民たちは土地を捨て置くわけには行かないから、「秋になったら、ここで獲れる米で返します」と、金のある人間から借りて営農費用を工面する。秋になったら収穫から返さなければならない。それで、国家に納める食糧は減ってしまったってわけだ。基本はそこにあるんだ。

だから、農場が農業をちゃんとできるように、国家が責任を持って資材や農薬なんかを全部供給しなければ、農民個人のもとには食糧は残らないんだ。国家に力がないから農業も掌握統制できない。そういうことさ。

クァク:そんなことで、結局、食糧はジャンマダンに流れていくわけです。それを、よろよろの国家が防ぐなんて実際には不可能ですよ。

チョン:もともとは、法律ではそんな農業経営はやってはならないと決まっているけれど、営農資材を使った分はどうにかして払っていかないと、農業がみなつぶれてしまうから、不法なのを知りながらも国家は統制できないんだ。

クァク:国が無理なことばっかりやろうとするのが悪い。改革開放の方向に進んで中国のように個人営農をさせて税金だけ納めるようにすれば簡単なのに。

チョン:できないんだよ。そうしようと誰も進んで言わないやないか
(つづく)
注1 新しい内閣 二〇〇七年四月に金英逸(キム・ヨンイル、陸海運相)が新首相になった。

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