市場制限の動機、原因
シム:韓国の報道に恥さらしなものが出た、不愉快だというわけですね?
クァク:盧武鉉大統領が来たときにはジャンマダンは閉じてしまって、夜だけ開けてた。それが今度のジャンマダンの統制の始まりでした。それから次が四〇歳以下の商売禁止。
だから平壌の人間は、「盧武鉉大統領が来たせいで……」なんて悪口言う人が結構いましたよ。人が集まるとそんな話ばかりでした。「盧武鉉が来たから商売もやれない。ジャンマダンが閉まってしまって死にそうだよ」なんて声ばかり。不満があっても盧武鉉のせいにすれば引っかからない、そういう理由もあるんですけどね。
シム:盧武鉉大統領は、わざわざ平壌の人たちから罵られるためにやってきたわけですね。
クァク:実際のところ、盧武鉉が来たことで、幹部たちはいろいろ懐が温かくなったんだろうが、国民は……。
シム:それで内閣が「ジャンマダンを制限しろ」なんて指示を下したんだな。けれどジャンマダンを制限したら国家も実際は損をするし、人民も損するでしょ。社会が混乱する方向に追いやっておいて、その損害がようやく目に見えるようになったら、あたふたと「またジャンマダンをやろう」というふうになる。こんな具合に、この国はふらふらしているわけです。だけど言いたいことも言えないから。
チョン:私の考えだが、ジャンマダンを統制する理由は、国家が改革開放するのかしないのかという問題ではないと思うんだ。
我が国では、中間幹部たちが将軍様に提議書を上げて物事が決まって行くじゃないか。「市場が無秩序になっている。貧富の差が広がって貧しい階層がたくさん増える」というような与太話を、中間幹部が将軍様にしきりに吹き込む。そして、次に将軍様に、取締りの提議書を上げる。
下の民にとってはジャンマダンが盛んになった方がいいのに、上では本当のことは知らない。実際将軍様は、中間幹部たちが提議書を上げてくるから、下の実態を調べることもせずに、文書にサインしてしまってジャンマダンが閉じられてしまう。そういうことらしいんだ。そんなこんなで内閣指示なんかになって政策が下りてくるんだよ。
シム:その中間幹部たちは市場が本当に悪いと思っているんですかね? 中間幹部たちにも利益があるのに。本心で提議書を上げているのではなくて、わざと事態をややこしくしようとしてるんじゃないのかな。
クァク:いや、僕は、市場が政治に悪い影響を及ぼすと思って提案書を上げているんじゃないかと思う。なぜかというと、朝鮮人はずっと食うや食わずだったのが、この五、六年の間に目が覚めたでしょ。「生きていくためには金が要るんだ」とね。
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