クァク:幹部たちを引っ張る力も違うようですよ。人民がみんなそう言い合っているほどだから、これはもう深刻ですよ。
チョン:あからさまに言えないから、「あれは石頭だ。父親には負けるよ」なんて言い方をするんだ。
(金正日は)首領様が逝去して一〇年間も海外に出なかったけれど、首領様は生きている時にヨーロッパを一周したし、中国には毎年、記録だと一一回か一二回行ってるんだってよ、非公式訪問しただけでも。公式訪問まで合わせたら、かなりの数のはずだ。
ところが一〇年間、海外どころか中国にさえ行かずにいて、最近になってようやく一年で一、二回行き来したんだ。だから、一言でいうと経済には明るくないわけだ。
シム:また息子かなんかが継ぐことになるんでしょうか? 首領様の次は将軍様、今度は弟が出てくるのか、息子が出てくるのか……。息子が出てきたら人々はどう思うかな? その方がマシかも、とでも思うかな?
チョン:「あの父親にしてあの息子」だろうよ!
クァク:人民が望んでいるのは、「はやく改革開放しよう、改革開放できないなら〈統一〉しよう!」だよ。
開放しないなら人民は〈統一〉に向かう
シム:そこでいう〈統一〉というのは何を指しているんですか?
クァク:南北が統一しようということじゃないですか。
シム:だから統一するというのは……、党では武力でもって(南を)食ってしまおうと言っていますけれど?
チョン:もう戦争はしたくないだろう。人々も少し前までは、「はやく戦争して、お前が死ぬなり俺が死ぬなり決着をつけよう。生き残った人だけでも人間らしく生きようじゃないか。はやく戦争して『統一』でもなんでもやってみよう」なんていう考えをもっていた。あまりにも暮らしが苦しく、あまりにも統制が厳しいもんだからそう言っていたのだが、今や民衆はこう言っている。
「もう戦争はできない、できないんだったら〈統一〉しよう」ところが、下の民衆は〈統一〉しようと言うけれど、中間幹部のやつらはいい暮らしをしているから、〈統一〉なんてはなから考えもしないに違いないよ。
シム:それじゃ、先生(チョンのこと)の言う民衆の考えというのは、韓国と戦って勝って統一しようというのではなくて、「韓国が朝鮮を飲み込んでくれたらいいのに」と思ってるという話じゃないですか。
クァク:とにかくわれわれ民衆は、ただ「〈統一〉だ、〈統一〉しよう」というけれども、中間幹部の連中、いい生活している連中は〈統一〉を望んでいないということですよ。〈統一〉を望んでいるのはわれわれ貧乏人だ。
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