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【総動員体制づくりの中心人物だった永田鉄山。人を”資源”として統制、利用するためには「愛国奉公心」や「犠牲的精神」が重要と指摘する】
【総動員体制づくりの中心人物だった永田鉄山。人を”資源”として統制、利用するためには「愛国奉公心」や「犠牲的精神」が重要と指摘する】

第3章
日本陸軍の国家総力戦研究と「人的資源」

「人的資源」の発想が生み出される
「調査委員会」の活動の集大成となったのが、1920(大正9)年5月に発行された『国家総動員に関する意見』である。
この180頁に及ぶ詳細な報告・意見書を執筆したのは、委員のひとりで2度のヨーロッパ派遣を経験してきた永田鉄山少佐である。

陸軍内で「永田の前に永田なく、永田の後に永田なし」と、その頭脳明晰さを謳われ、軍事官僚エリートとして有能ぶりを発揮する永田は、国家総動員体制づくりの中心人物になった。

『国家総動員に関する意見』はまず、第1次世界大戦が「其の規模広大にして国民的戦争」あるいは「国力戦争」ともいうべき、まったく新しい戦争だという事実を示す。

ヨーロッパ参戦各国は「一事一物」にいたるまで戦争遂行に役立てるため、陸海軍の動員と、全産業・交通機関の統制管理をし、国民の職業の自由を抑制して労務の強制もしくは半強制をおこない、「徹底的に全国民の力を戦争遂行の大目的」に集中させたと説明する。

そして、「国家総動員とは一時若は永久に国家の権内に把握する一切の資源、機能を戦争遂行上最有効に利用する如く統制按配するを謂ふ」と定義する。
それから、国家総動員を「国民動員、産業動員、交通動員、財政動員、其の他の諸動員(教育動員、学芸技術動員等)」に分類し、「総動員の目的物たる有形的資源は人畜、物体及び金銭の三者に外ならずして、此等は何れの動員にも必要不可欠のものなればなり」と言い切っている。
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