外国人か?と声をかけてきた男性に外出禁止令について聞いてみる。だが、英語が喋れないんだと恥ずかしそうに言う。それでも「インドがカシミールでたくさんの人を殺したからだ」と言う。つまり、デモを弾圧する過程で人が殺される→さらなる抗議デモが起きる→外出禁止令、ということを言いたいのだろう。

すると、やはり周りから「フリーダム!」という声が上がってくる。以前ならば、こっそり言うことはあっても、路上の真ん中で一般の人びとがそんなに直接的に言うことはなかった。やはり空気は変わった。

友人の人権活動家の家に行くと「(地元の)新聞が3日も発行されず、テレビ局も放映禁止だ。人びとの家には薬もなく食糧もない。こんなことは近年なかったことだ」と憤っており、抗議をする声明をNGOや知識人に送るといい、その作業の真っ最中だった。彼には2年半ぶりに会うが、相変わらずのその働き振りを見ると、自分も頑張らなくては、私が奮い立たせられる。

帰りがけにバザールを通るが、状況は変わらないようだ。米が五kgは入いりそうな空の麻袋をもった男が肩をすくめていた。
宿に帰ると3人のミリタント(最近パキスタンから侵入したと思われる)が4人の子供を含む7人の人質を取ってジャムーで立てこもっている事件を、生中継で各局が争って報じている。

その過熱ぶりを「カシミール人はテロリストだとメディアが印象付けようとしているんだ」と宿に来ていた隣人が酷評する。確かにこの事件自体はテロに他ならない。しかし、それと自分たちの独立運動を意図的に混同するような、大雑把な報道の仕方に我慢がならないのだろう。

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