1980年代には人口増抑制のため産児制限スローガンまで出していた北朝鮮は、今では逆に2人目の子供から配給を増やしたり、4人目を生むと「英雄母親」として表彰するなど、出産を奨励している。
一方で、堕胎を禁じ闇の手術を厳しく取り締まっている。
結論から言うと、今世界で流通している北朝鮮の人口推計値で信用できるものはひとつもない。
CIAの統計値も首をかしげたくなる。
1990年代の飢饉の間も人口が増えているというのはありえないことだ。
北朝鮮当局の発表数値に至っては、水増しという他ない。大量の餓死者を発生させるに至った無策無能を隠蔽し、責任を回避したいというのが人口統計操作の動機だろう。
さらに、北朝鮮の構造的な不正腐敗も水増しの原因だと思われる。
「住民人口や、洪水などの被災民の数を水増し報告するのは日常飯事。幹部たちが横領できる支援物資が増えるから」
とは、内部記者ペク・ヒャンが取材した清津市の地方政府幹部の弁である。
国連人口基金は、今年10月1日から15日の間に、北朝鮮全域で14万人の住民を動員して全戸を訪問し、家族構成、職業、個人所得などを調査する予定である。
しかし、指導サポートする国連要員はわずか10名ほどが予定されているだけだ。その上、国連要員が立ち入れない地域が山ほどある。
このまま北朝鮮当局任せのセンサス調査が行われれば、国連のお墨付きで統計数値が捏造されてしまうことになりかねない。
北朝鮮の産業復興や人道支援のためにも、正確な人口調査は欠かせない。国際社会の監視が必要だ。
(※北朝鮮の人口減少については、拙著「北朝鮮難民」 講談社現代新書を参考にされたい)
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