ジャンマダン経済について、少しでも常識があったなら、食糧専売制など導入させなかっただろう。食糧専売制導入によって市場は萎縮してしまった。
それは総合市場を創設した国家の経済政策(二〇〇三年四月)----つまり部分的ながら市場経済システムを導入発展させるという政策に、自ら障害となって、逆行する結果をもたらした。中国との貿易量も縮小した。

二兎を追って一兎も得られなかったのだ。朝鮮人は無知な上、口に砂利まで咬まされていて、言いたいことが言えないから、立て直すことができなかった。

石丸:食糧専売制は、いったいどのような方法で導入しようとしたのか?
ケ:突如行われた専売制導入の動機は何かというと、名目上は「軍隊を食べさせなければならないから」だった。先軍政治らしく、軍隊をしっかり維持しなければならないというわけだ。

しかしその理由が滑稽だった。「軍糧米の大部分がジャンマダンに流出して軍人たちに供給できないから、国家が専売制をうち立てて、市場などでの食糧流通を国家が独占しなければならない」と言うのだ。つまり額面通りに正直に解釈すれば、「市場での食糧流通を徹底的に断絶して軍部の腐敗を阻もう」と言うことにほかならない。

しかし、どうして国家は、こんな無意味で馬鹿馬鹿しい食糧専売なるやり方にこだわるのか?
今の先軍時代において、権力者たちの一番の頭痛の種は、やはり大手を振っている軍上層部の連中のひどい不正腐敗だ。しかし時代が先軍であるだけに、腐敗した軍上層部をこの時期に攻撃したり、揺さぶるというのはいろいろとまずい。だからと言って社会全体が軍部を見習って不正腐敗の道に入ることを傍観しているわけにもいかない。

こんな専売制のような怪しい措置でもいいから、既得権を再整備、拡充しようというのが、現権力層の動機だと思う。結局、「先軍運動」というのは、その始まりからそうであったが、既得権層が個人蓄財に走ることが力の源泉だったというのが、私の結論だ。
(つづく)

注1 食糧専売制 食糧の販売を、国が指定する商店や配給所でのみできるようにした。価格は一定でなく変動する。市場で勝手に食糧を売買することはもちろん禁じられ、食糧を許可なく運ぶことも取り締まった。
しかし専売制を維持できるほど国家は食糧供給能力を持っていないため、結局また「闇市場」を発生させている。食糧の流通が非常に悪くなる結果を招き、二〇〇八年に入って食糧価格高騰の原因のひとつになっている。

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