見極めが難しい。友人知人の情報もまるであてにならない。外見からその技術力を判断することはほぼ無理に等しく、失敗した場合、最悪の事態は10円玉程度の穴を作られることが想定される。
失敗したこともある。完全なる復旧には数週間かかり、カモフラージュするにも実に骨が折れた。だから、床屋選びにあたっては真剣なのである。
私の髪型は坊主頭である。が、それでも現地の理髪師にとっては難しいようだ。私の髪は完全なる直毛。慣れていない髪質に戸惑う様子が、必ず伝わってくる。ここ、カメルーンの高原に佇む町バメンダでもそうだった。
まず店内に入ると、希望の髪の長さを指で示す。店主は黙って頷き、椅子に私を促す。バリカンにたっぷりと油を差し、頭頂部のウズ近辺から順目にバリカンをなぞらせていく。彼らの縮れた髪質ならば順目でも髪が刃にかかるが、私の直毛はまるで刈られず、一向に短くなっていかない。
そこで初めて、バリカンの向きを変えて逆目に刈っていくのだが、いきなり髪が刃にかかっていくため、髪がブチブチと千切れる。ここで丁寧に対応してくれないと、でこぼこの頭になってしまう。後頭部でブチッと感じた場合は、最悪の事態が発生した可能性が高い。私も彼も、この辺りから緊張感ががぐっと増してくる。
作業中の店主の表情は真剣そのもの。慣れない髪質に対応するために、額に汗がびっしりと浮かんでいる。世間話など到底期待できる状況に無く、愛想笑いすらない。その表情を鏡越しに見て、こちらも手に汗をかいてくる。
お互いにぐっしょりと汗をかいたところで、なんとか無事に完成。多少のでこぼこはあるが、穴は無く完成したようだ。やっと、店主にも私にも笑みが浮かぶ。洗髪台はなく、大きな食器洗い用スポンジに水気を含ませ、頭をなぜながら残った頭髪を落とされて、すべて終了。リンスではなく、ミシンオイルの匂いを頭からプンプンと漂わせながら、私は帰路に着いた。
いつか私も、他の客人のように、世間話をしながら髪を切ってもらいたい。