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満身を込めてのホスピタリティだった。そもそも、引きずり出したベッドはひとつしかないもの。生まれたばかりの赤ん坊を抱いた奥さんは、ござを敷いて床に座っている。

夕食には露店からフール(豆を炊いたもの)とパンを買ってきてくれたが、それも1人分だけ。夫妻は余りものを口にしていた。せめて食事代くらいは自分で支払いたいと伝えても、彼はまた首を横に振る。夕食後は、水を注いだバケツがひとつ。これで体を拭くようにとの計らいだ。

さっぱりした体をぬるい風に晒しながらベッドに腰掛けていると、彼はラジオを持って私の隣に腰を下ろした。チューニングを合わせた局は、BBC。彼は英語がわからない。私を思ってのラジオ、である。私が彼のもてなしを精一杯享受することで、どうか彼も満たされていて欲しいと願いながら、ふたりで星空を見上げ、BBCのニュースを聞いた。

私はこれまで、アフリカの国々で宿に困ったことが無い。宿の無いような場所でも、人が住むところならば、誰かが声をかけてくれた。
ただし、痛いほどのもてなしと向かい合う覚悟が必要である。

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