【「大した怪我じゃない」と言うが・・・】
(撮影:広瀬和司)

いま独立運動が戦術として非暴力を手段として使い、正当性を内外にアピールしているなかで、彼らの行動は疑問符がつく。他のカメラマンも「お前、この光景の写真のキャプションをどうする?独立のために闘う若者たち、とでも付けるのか?」と私をからかう。

ナワタ地区では、先々週に若者が1人死んでいるため、警察はやり過ぎないように気をつけているのか、あまり深追いはしない。それに付け込んでか、若者たちの投石は激しくなり警察官や中央予備警察隊CRPFの将校が石に当たって頭や顔から血を流して、下がってくる。

特にCRPFの将校は、至近距離から大きな石を投げつけられたため、ヘルメットを被っていたにもかかわらず、負傷して血を流している。

私や他のカメラマンが彼の写真を撮ろうとすると、怪我をしたのを恥じたのか「こんなのは、大した怪我じゃない、撮る価値は無いぞ」と叫び、体面を繕おうとする。

帰りに、こちらで家族同然の付き合いをしている銀行員のY氏の家に立ち寄る。警察官が2人捕まって殴られた、と報告すると「いい気味だ」という。彼の父がかつて警察の将校だったにもかかわらずである。前述の「こんなことは良くない」という発言は極めて少数派で、誰に聞いても、警察官や兵士が負傷したら当然だという。

しかし、今日のように、やられたらやり返せ、をしている限り問題の解決ができるわけはない。その負の連鎖を断ち切る手段こそが、非暴力であるはずなのだが。

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