【CRPFも、抵抗する人びとを撮影して特定し、後で家に押し入る】(撮影:広瀬和司)

帰途、ナワタ地区の友人にCRPFの気が立っているようなので、気をつけるようにと連絡を入れる。夜になって、その友人からの連絡によると、やはりCRPFによって若者たちが手酷く殴られたという。

私が思ったのは、そのときに誰かメディアが居れば被害は抑えられたのではないか、ということだった。
そのことを、地元のカメラマンに質問すると「なぜ、俺たちがCRPFの側から撮影するのかわかるか。投石をしている側から撮影していると、お前たちも仲間だ、といって一緒に殴られるんだ。

もう何人もカメラマンが殴られ、カメラを壊されている。CRPFは最悪の連中で獣のような奴らだ。報道の自由なんか言って通用する相手じゃない。これが、インドの民主主義なんだ」という。

私自身も、撮影を阻止しようとする兵士に何度か追いかけられているので、気持ちはわかる。
他のカメラマンからはまた違う事情を聞いた。「俺たちが警察の側から撮影するのは、投石する側が嫌がるからでもあるんだ。

世界の他の同じようなケースだと、鎮圧される側から撮るのが普通だけど、ここでは違う。至近距離で顔を撮られて新聞やテレビに映ると、それを見た警察が後で捕まえにくるんだ」。
「それに、カシミールではCRPFは空に向けて撃つのではなく、水平射撃をしてくる。

自分たちの安全のためでもある」という。また、彼らはCRPFの広報や上層部にも抗議はしている。しかし、「メディアの安全を保障する、と口で言うだけで、同じことが何度も起きている」と言い、「この問題に解決策は無い」と言い切る。

それでも彼らはあきらめたわけではない。兵士たちに追いかけられながらも、隙を見て兵士たちが市民を殴ったり、混乱で店を閉め切れなかった商店から物を盗んだりしている光景を撮影するのに成功している。ジャーナリストとは、市民から放たれた隠密である、と故本田靖春さんは言っていたが、彼らはバイクに乗ってまさに忍者のように神出鬼没に現れ、今日も不正を隠そうとするCRPFを出し抜こうとしている。(了)

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