~情報の流通で意識に大きな変化~

足元に注目。厚底サンダルで市場を闊歩する平壌の女子中学生。流行という外部情報も商品とともに入ってくる。07年8月、平壌市船橋市場。 (撮影:リ・ジュン)
足元に注目。厚底サンダルで市場を闊歩する平壌の女子中学生。流行という外部情報も商品とともに入ってくる。07年8月、平壌市船橋市場。 (撮影:リ・ジュン)

※本稿は「論座」(朝日新聞社)2008年8月号に書いた「北朝鮮の大変化を追尾せよ」を再録したものです。

韓国の主要地上波放送は、衛星でも同時放送されていて、パラボラアンテナとチューナーさえあれば、中国東北部や日本でも視聴することができる。
北朝鮮ではもちろんご法度で、決して直接は見ることができない。いったん中国を経由して入って行くのだ。
中国には190万人にのぼる朝鮮族が居住しているが、中国朝鮮族の間でも韓流ドラマは大人気である。ドラマは衛星放送でオンエアされた数日後には、違法にCDにコピーされ、市場に並ぶ。価格は新しいもので10元(約150円)、古いものだと1元(約15円)。

この海賊版がさらに複製されて、国境の川・豆満江と鴨緑江を渡って北朝鮮に密輸されていくのだ。
映像の流通を可能にしたのは、10年ほど前から中国で爆発的に普及したビデオCDプレーヤーだ。DVDに比べると画質は劣るが、再生機が2000円程度と格段に安い。

続々と新製品が出る中国では、このビデオCD再生機やテレビの中古品が二束三文で出回るようになった。それが2000年頃から廉価な値段で大量に北朝鮮に輸出されていった。

北朝鮮当局も、これら映像機器自体は輸入を厳しく規制しなかった。自国の映画やプロバンガンダ映像を国民に見せる必要があったからだろう。
ところが、北朝鮮の人々が見たかったのは、金日成―正日親子の革命業績映画ではなくて、外国で制作された娯楽ものだった。一時は香港のカンフーものが人気だったが、韓国の衛星放送を見る中国朝鮮族が増えて、言葉がわかる韓国もののドラマがどっと北朝鮮に入るようになった。
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