〈インタビュー〉国家住宅はこうして売買される 3
北朝鮮内部記者 リ・ジュン/聞き手 石丸次郎
複雑化する取引形態
石丸:住宅売買には他にどんな形態があるか?
リ:住宅売買の別の形式として、国家住宅の利用を許可されている人が、他人にその利用許可権を分けてやる場合もある。中国のような「家賃形式」ではないのだが、国家から配定された家が、主人の意思によって「同居」という形で他人に分割されるケースがある。
例えば、Aの家は二人家族だが家が大きいとする。それで家の管理をしてもらうことを計算して、一部屋と洗面所を家のない人Bに、金をもらって「同居」を許可するケースだ。
このような場合でも、居住の自由が問題となる。このようにBを「同居」をさせるには、Bがまず、居住手続きから行わなければならない。Aの家が属している人民班(隣組組織)、洞(地区)事務所、保安署(警察)に行って登録をするのだが、これには家主Aの入舎証があれば可能だ。
Aはこの時、役所の都市経営課に「家が広いのに現在住んでいるのは二人だ。Bがうちの親戚(兄弟あるいは近い人という口実を設ける)なのだが、しばらく空いている部屋を貸してやりたい」と申し込む。該当の部署ではAとの合意の下に「同居入舎証」(正確にはAの住居利用許可証の同居欄に追加記載)という住宅利用権をBに発給する。この手続きは比較的簡単だ。
しかし住宅事情が悪いため、このような同居にも闇の売買関係が発生する。朝鮮ではこのような同居が随分前からある。
長期間よその土地に出ている軍人や建設突撃隊員(注1)や大学生たちは、ほとんど家賃制に近い形式で近隣住民の家から部屋を借りている。住居上の便宜を主人が金を取って図る場合も非常に多いそうなのだが、私には具体的な例は分からない。
とにかく住宅売買の現状は、ますます複雑多様化しながら、しかし発展している。
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