取材2、3
平壌市〇〇区域に住む男性2(五〇代)と、平壌市の別の区域に住むやはり五○代の男性3との会話の中で、李新大統領に関する部分をピックアップした。
二人とも「非核開放・三〇〇〇ドル」については聞いたことがなかったので、簡単に李新政権の政策について説明した後に感想を聞いた。
二人の生活はともに中程度。男性3は韓国ドラマをよく観ており、それに関連した商売も多少手がけている。

二人とは別々の機会に会って取材した。
男性2:本当に自分が三〇〇〇ドルの収入になったら、そりゃみんな喜びますよ。われわれ労働者が一生働いたって三〇〇〇ドルなんて稼げませんからね。

リャン:で、実際あなた自身はどう思われます?
男性2:仮にそんな構想が実現したとしても、私なんかに回ってくるものなんて、本当にあるんでしょうかね。上の連中が喜ぶだけのことでしょう?
リャン:なるほど。そういうふうに考えるんですね。
◎   ◎   ◎
男性3:南朝鮮で大統領が替わって、南北関係はギクシャクするって噂だよ。どうしてかっていうと、李明博は米国に留学してたから、米国風に染まっちゃってるだろ?
だから関係が悪化すると。李明博は、なんでもかんでも現代(ヒョンデ)式で、実利主義でやろうって言ってるみたいだからな(李大統領は現代建設の元会長)。

リャン:でも、(北は)あの現代グループとは上手くやってたじゃないですか?
男性3:でも、李明博は「われわれ式社会主義」とは合わないって、平壌ではそう言ってるよ。

リャン:鄭周永(チョン・ジュヨン)(注3)とは上手くいってたんでしょう?
男性3:「李明博が米国に留学したのが悪いなら、なんで金正日の息子や親戚はスイスだか何だかの金のかかる学校に行かせるたんだ?」って言う人もいる。

リャン:李明博大統領の就任式は見ました?
男性3:ああ。(どうやって見たかは不明)

リャン:(北も南も)式典はみんな似たり寄ったりでしょ?
男性3:金正日は出てきたって手を振るだけしか能がないしね。

現代財閥の創始者鄭周永(左手前)は、初めて南北経済協力に名乗りを上げた経済人として朝鮮でも有名である。牛を連れて2度目の平壌訪問を果たし、1998年10月には金正日と会談した。(2007年7月朝鮮中央テレビより)
現代財閥の創始者鄭周永(左手前)は、初めて南北経済協力に名乗りを上げた経済人として朝鮮でも有名である。牛を連れて2度目の平壌訪問を果たし、1998年10月には金正日と会談した。(2007年7月朝鮮中央テレビより)

 

取材4
夫が今も職場から配給を受けているという咸鏡南道在住の三〇代の主婦。市場で薬を売っている。本人曰く、韓国の放送など聞いたことも韓国ドラマを見たこともないという。
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