以前、南アフリカ共和国のケープタウンで出会った現地在住の女性から、日本人の料理は何を食べても魚臭くて嫌だと言われた。嫌と言われても、魚の出汁のうまみは和食に欠かせない。では、アフリカではいかに。
セネガルの代表料理のひとつにチェブジェンがある。米とともに玉葱、人参、キャベツ、トマト、サバを炊いた炊き込みご飯だ。米食の日本人には親しみやすい。
以前の記事でご紹介したような西アフリカのカフェテリアでは、広くスパゲティをメニューに見つけることができる。出てくるものは、まさに日本のナポリタン。トーゴでは現地のご家族から夕飯に招かれた。中庭では夕飯の支度中。石臼の上で干した小魚をすりつぶしていた。トーゴでも魚の出汁をとるんだなと、私は目を細めた。
アフリカ料理といっても様々だが、共通点がひとつ。前述の料理にはすべて、黒い塊が使われている。
正体は、マギー。日本でも知られる固形ブイヨンだ。サハラ砂漠以南の西・中部アフリカでは、料理という料理に使われている。マギー以外の固形ブイヨンも売られているが、製品名はなんであれ、「マギィ」と言えば通じる。バイクのことをバイクと呼ばずにホンダと呼ぶようなことと同じだ。
コーラ、ネスカフェ(インスタントコーヒーの総称として、そう呼ばれている)、マルボロ、マギィは、西・中部アフリカのどれだけ奥地に分け入っても、無いことはない。
写真は、マリ北部のタンバガという小さな村でお世話になっていた際の料理風景。電化製品は裸電球のみというシンプルな生活スタイルだったが、もちろんマギーはあった(写真右下、女性の左足の先に見えるのが、マギーの包装紙)。
液状の卓上タイプも広く使われている。注文したオムレツに、マギーをたっぷりとかけて食べる男衆を見ることも少なくない。あれだけふりかけてしまっては、もはや風味どころではなく味そのもの。マギーの魔力、恐るべし。
マギーはネスレ社の製品。ネスカフェとともに普及させたのだろう。化学調味料の味わいは舌に響き、後を引く。現地の食卓を見ると、マギィの無いアフリカ風味はもはや成り立たないと言っても、言い過ぎではないと感じる。
ネットで検索すればアフリカ各国の料理レシピをいくらでも見つけることができるが、ちょっと上品過ぎるものも多い。本場の味には濃い目のマギィ、である。