四月一五日の故金日成の生誕日を迎え、市民に安南米(南方の長粒米)一〇日分が特別配給されると米価は下がったが、五月中旬になり農村支援に動員された人々が自分の食べる食糧を市場で購入し始めると、米価は三二〇〇縲恷O三〇〇ウォンにまで跳ね上がった。
これまでは農村支援の時に食糧供給停止証明書を発行してもらえば農村支援期間の食糧はただでもらえたのだが、国家の食糧倉庫が空っぽで農村支援者へ食糧を供給できなくなり、支援者は自腹で腹を満たさねばならなくなったのだ。

他の都市では典型的な市場投機現象である買占め、売り惜しみが横行した。
特に清津(チョンジン)や平城(ピョンソン)などの大きな卸売市場がある都市では、貿易機関と商人らがぐるになって、食糧の買占め、売り惜しみを大々的に行ったという。

清津では、四月に入り連日のように米価が一〇〇ウォン単位で急騰する中、かなりの数に上る人々が数百キロ数トン規模で米を売買する騒動が起こったという。当局は市場に対し、政治的な抑制力はあっても、経済的な調整能力を全く持ち合わせていないということが露わになったと言える。
また、今回の調査ではっきりしたのは、朝鮮の市場の物価が中国経済と連動しているということである。

〈表2〉は中国商品の卸売市場がある清津市(平城と並ぶ、朝鮮の二大卸売市場のうちのひとつがある)の物価変動グラフである。データは前述したとおり、朝鮮内部の協力者たちが四月以降、各地の物価動向をほぼ連日伝えてきたものだ。
韓国を含む外国からの支援が途絶した状態における清津の市場価格であるという点で、比較的中国からの影響を強く受けていることが推測されるグラフだ。

〈表2〉 今回の食糧危機時における清津市の主要物価及び外為レート変動グラフ このグラフはリムジンガンの朝鮮内部の記者及び協力者の報告を基に作成した。グラフの横軸は日付、縦軸は朝鮮の貨幣単位、ウォンである。白米、トウモロコシ、ガソリンはそれぞれ1キロあたりの価格。
〈表2〉
今回の食糧危機時における清津市の主要物価及び外為レート変動グラフ
このグラフはリムジンガンの朝鮮内部の記者及び協力者の報告を基に作成した。グラフの横軸は日付、縦軸は朝鮮の貨幣単位、ウォンである。白米、トウモロコシ、ガソリンはそれぞれ1キロあたりの価格。

 

上述のように、現在のところ、食糧の三大供給源(小土地を除く)のうち、糧政と供給は価格不変であり、市場価格のみに可変性があるという二重価格制である。
しかし、貿易との連関の強い中国の人民元とドルの変動に、清津市の米価がある程度連動していることがグラフからわかるが、それは、市場が自ら貿易を通して食糧難を打開しうる調整機能を持っているということを表している。
別の内部記者の報告によると、鴨緑江および豆満江流域の国境地域における五月中旬と下旬の米の密輸手数料を比較すると、一トンあたり二〇〇人民元から四五〇人民元に上がったという。
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