このように、先軍時代に金持ちになった幹部連中を相手に、金がなくて学校に行けない女子大生、三〇歳前後の既婚女性らが、自ら春をひさぐ行為は珍しいものではなくなっているのだ。
取材 シム・ウィチョン(沈義川)
二〇〇七年八月
(整理 チェ・ジニ)

整理者解説
なぜこういうことが起こるのか?
何よりもまず、「苦難の行軍」期以降、富裕層と貧困層への二極化が大きく進んだためである。
特権権力層の不正腐敗が進むにつれ、「社会主義の固守」という美名の下、一般大衆に対しては市場活動を制限し、数%に満たない既得権層には暴利を許すという経済施策が実施されてきた。

このような矛盾した経済構造により、先に述べた工場支配人の「石親分」のような末端の権力者ですら、労働者の月給(名目上、平均約二〇〇〇ウォン、〇八年七月時点で約七五円)からは考えられないような贅沢を享受しているのだ。
次に、中央党や軍の上層部ら、不正腐敗により金持ちになった上級幹部たちの贅沢な暮らしぶりが、北朝鮮社会に倫理観の欠如と不道徳、無秩序を招いているためである。

世界に知られる「われわれ式社会主義」を声高に強調する北朝鮮の権力層は、自分たちの堕落した放蕩生活を権力の象徴と勘違いしている。
その一方で、下級幹部や一般大衆の中に現れた些細な「非社会主義現象」に対しては、「われわれ式社会主義」の権威とタブーを侵した罪という烙印を押し、ためらいもなく処刑も含めた処罰をする。民衆はこれに対し「川上の水が濁っているから川下が濁るんだ」と激しく反発している。

さらに、北朝鮮の先軍政権下の司法制度は、その構造と、実際の法執行の両面で完全に詐欺的、欺瞞的である。
「苦難の行軍」の時期から今日に至るまで、存在すらしない「安企部」の策動を云々し、人道援助をしてくれる韓国と、その韓国に心が傾く一般民衆との間に分裂のくさびを打ち込もうと躍起になっており、特権既得権層は南北の窓口の独占を常に目論んでいるのだ。
(チェ・ジニ)

二〇〇七年夏に行われた二つの公開処刑 上[事件・事故]

おすすめ<北朝鮮> 写真特集・無料動画… 

★新着記事