ここまで悪かったのか...。リムジンガン記者シム・ウィチョンが撮影してきた内部映像には、想像以上に経済が悪化がしている現実が赤裸々に映し出されていた。今年に入り北朝鮮の食糧事情が急速に悪化したことはAPN上でも報告してきた。農業政策の失敗、国際穀物価格の上昇、この10年毎年約40-50万トンのコメを送ってくれていた韓国に支援要請しなかったことなどが原因だ。
リムジンガン編集部では、シム記者に食糧事情についての取材を依頼した。彼は状況が悪いと伝えられた黄海道に向かった。撮影が敢行されたのは8月中旬から末までの2週間。それは、ちょうど金正日総書記の公式動静が途絶えた期間にあたる。
シム記者が撮影してきたのは北朝鮮南部の海州(ヘジュ)市。黄海南道の道庁所在地である。西海岸では南浦(ナンポ)、新義州(シンウィジュ)に次ぐ貿易港で、周辺には穀倉地帯が広がり、困窮に喘ぐ北朝鮮の中では比較的マシな地域である。外国の人道支援団体も時折訪れることがあり、港町であることから、外国人にも見せられるように街並みは整えられている。中国から最も遠い地理的条件のため、市場経済の波が最も遅く到達したのだが、今では他地域と遜色なく商売が盛んに行われている。
シム記者が撮影したのは約2時間。その短い撮影時間に、非常に多くのコチェビ(浮浪者/ホームレス)の姿が捉えられていた。物乞いをする子供もいれば、家族で路上生活をしている姿もある。シム記者によれば、春先からコチェビの数が非常に増えたという。経済不振が続く中で食糧価格が急騰したことは、ひと時に多くの民衆の家庭を破壊し、生活を転落させたようである。
周知の通り、金正日総書記は9月9日の建国60周年の公式行事に姿を現さず、重病説が世界を駆け巡っている。過度に金総書記に権力が集中した北朝鮮の体制において、指導者に異変が発生しているとすれば、統治体制が不安定化していく可能性が考えられる。そして、その内部の経済事情が悪化していることが、シム記者のビデオリポートから見て取れるのだ。 (解説・石丸次郎)
動画 (C)ASIAPRESS
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