平壌のアパート街を視察中の金日成と金正日。平壌は高層アパートが林立して見栄えはいいが、その実80年代から深刻な住宅難が発生していた。(わが民族同士HPより)
平壌のアパート街を視察中の金日成と金正日。平壌は高層アパートが林立して見栄えはいいが、その実80年代から深刻な住宅難が発生していた。(わが民族同士HPより)

〈解説〉住宅闇市場と横行する不正腐敗 2(リュウ・ギョンウォン)
住宅事情悪化の要因

朝鮮式社会主義制度の下では、国家の所有物である国家住宅の購入や交換を一般住民が行うことはありえない。
しかし一方で、売買が可能な個人住宅は極めて少なく、さらに住宅事情が劣悪である上、計画経済を司る国家には、住宅不足を解決する能力がない。
これが、住宅闇市場が生まれることになった原因なのである。

ここで、朝鮮の住宅事情の悪化を招いた八〇年代の四つの要因を簡単に述べておこう。
要因の第一は人口の増加だった。
戦後(朝鮮戦争後)世代が結婚年齢に到逹した八〇年代、朝鮮は深刻な住宅不足に見舞われた。
戦争を経験した国々はどこでも、戦後しばらくして爆発的な人口増加を迎える。北朝鮮では一九五三年の停戦から一九六〇年前後に生まれたベビーブーム世代を「戦後世代」と言う。

一九六〇年代中頃、この世代が学齢期に達すると、国家的な食糧危機と同時に「校舎不足」が発生した。これに対して国は、学校建設、主体農法、「飯を食う人間は全て農村を支援せよ」という国民総動員、そして「世帯当たりトン単位のキムチの漬け込み」などの政策を実施した。
しかし八〇年代に発生した住宅危機に際しては、国家的対策などほとんど存在しなかった。何もすることができなかったのだ。
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