林解説員は、台湾独立を支持する声はますます高まっている、ともいう。これも台北の実状とはずいぶん乖離している。彼は十年ほど前まで台北支局にいた人だが、そのときの感触をいまも持ち続けおられるのか、あるいは台湾人意識の高まりと独立志向を混同しているのか…

先月末の民進党のデモ。「台湾加油(がんばれ)」と書いた日の丸を先頭に、座り込む群衆の間をごそごそと歩き回る一群の日本人がいて、失笑をかっていた。そうしたことをして、台湾人が歓喜歓迎するとでも思っているのか、マスコミはとんでもないニッポンジンを生み出すことがある。

いま台湾は政府発行の商品券が話題だ。話題になったと思ったら、一週間で方策がまとまった。麻生さんもあんぐりの超特急景気振興策が実現した。来年の旧正月に一人3600元(約一万円)の「消費券」を全国民に発給するという。

これが出てきた「原因」は「日本」である。日本にあるものはとにかく台湾にもあらなければならないという対抗心からこうした珍事は発生する。「理由」はもちろん景気刺激、ということになっているが、ほんとうの「理由」は「陳水扁」にあると思う。

馬英九政権としては、粛々と法的手続きにのって速やかにこの事件を処理したいのである。法手続き上不備があってはならない。しかも絶対特別待遇は許されない。いずれにしろとんでもない反撃が自分の身に返ってくる。

この「消費券」が出た途端、マスコミも市民の関心もすっかり「消費券」に移動した。誰にもらえるのか、何に使えるのか、さらに実際に何に使うかで台湾中が大騒ぎ。
「商品券」を企画した人は、台湾人をよく知っている人である。人々の目はすっかり陳水扁から遠のいてしまった。見事な作戦だった。

この木曜日に、シンデレラことご長女陳幸が再び、日刊紙に投稿した。綿綿と恨みと日々の苦痛を訴えたものである。毎日神様に祈っているといい、できたら外国に出たいともいう。同情して欲しいという気持ちはわかるが、犯罪行為には謝罪すべきだし、異論があるならきちんと反論して欲しいと思う。

とにかく陳水扁からはなんの反論も出てこない。弁護士を通じて語られたのは、「あれは政治献金だ。企業からの献金は国民党だってもらっている」というもの。「国民党」もやっているじゃないかというのが、陳水扁一家、そして民進党の首尾一貫した主張である。

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