[柳本通彦] 台湾海峡天氣晴朗なれど No70~「Xデー」4
【緑の鉢巻が陳水扁】
中台交渉の中国側の代表である陳雲林 (中国共産党中央台湾工作弁公室主任・海峡両岸関係協会長) が明日3日、台湾を訪れる。
台湾側代表である江丙坤 ( 海峡交流基金会長 ) と両岸の海運・空運・郵政・食品安全の四つの議題で協議をかさねるほか、6日の午後四時半から馬英九総統との会談が予定されている。
中国として最高ランクの要人の訪台。今回の協議では、直航便の毎日運航やパンダ問題、そして食の安全問題などに一定の結論が出る見通しだ。陳会長は来台に先立って、毒ミルク問題でとくに台湾同胞に謝罪の記者会見を開くほどの意気込みを見せている。
先日南部で海峡両岸関係協会副会長殴打事件が起きているだけに ( 殴打の市議は起訴 )、台湾治安当局は警官7000人で保護に当たる。また治安に不安がある中南部への訪問は中止になった。宿泊先である台北圓山大飯店は厳戒態勢である。
この陳雲林訪台にかみついているのが陳水扁。共産ゲリラがくるぞ、捕まえるんだ、ともいい、陳雲林も馬英九も死刑だと民衆に抗争をよびかける。「共匪=共産ゲリラ」などという言葉は蒋介石時代の死語である。狂気の沙汰としか思えない。前総統がこうした暴言を各地で繰り返しているのが現在の台湾なのだが、人々は静かである。
先週の10・25の民進党のデモ。5隊にわかれて総統府前にむかって行進した。その一隊を率いたのが陳水扁。演説をしないという条件付で参加が認められたのだが、前総統の疑惑や一連の暴言に免罪符を与えたものとして民進党への風当たりはますます強くなっている。
日本のメディアはこのデモの参加者を60万人と報じていたが、260万都市で60万人もの人間が行進できるはずがない。最終的に集合した人数を見てもせいぜい数万人である。しかも陳水扁の一隊は民進党主蔡英文の一隊を上回っていたという報道の通り、確かに一万人以上を従えてそごう前から中山南路までを行進した。
ゼッケンを見ると高雄など南部から集まっていた人たちが大半。陳水扁の周囲は警官隊がガードをつくり、さらにマスコミが囲み、まったく近づけない状態だった。
最後に宣伝カーに乗った陳水扁が手を振ると「陳水扁頑張れ」の声がいっせいに上がった。そのあと民衆の中に入って泳ぐように車まで進み、去っていった。そのときにかすかに背の低い彼の丸い頭が見えた。
先月末陳水扁の腹心とも軍師とも言われた邱義仁元総統府秘書長が逮捕。外交機密費流用。これで拘留者は8人になった。
六日には陳水扁の長男夫妻とシンデレラこと長女が出廷を求められている。財界の大物たちの事情聴取が続き、陳にかかわった者たちが次々に拘置所に住居を移している状態である。その混乱のなか、中国共産党要人が台湾入りすることになる。