【2002年、中国・瀋陽日本総領事館に駆け込む1年前のキム・ハンミと母のリ・ソンヒさん。一家の韓国定着も順調ではないという】(01年・撮影:石丸次郎)
2008年1月、韓国で初めて「北朝鮮出身の女医」が誕生し話題になった。04年に夫とともに脱北した李慶美(イ・ギョミ)さんである。
韓国入りを果たした脱北者は2008年11月現在、累計で約1万5000人を越えたが、そのうち北朝鮮で医師だった人は約80人。
しかし、韓国では北朝鮮の医師の資格が認められないため、新たに国家試験に合格しなければならない。李さんはひたむきに努力をして、自力で地位をつかんだが、脱北者の中ではまれなケースである。
脱北者703人を対象にした今年3月実施の大韓赤十字社によると、76.3%が「無職」、86%は「私は韓国で下流層である」と答えたという。脱北者の韓国定着が依然として容易でないことを物語っている。
北朝鮮向けのラジオ放送「自由北朝鮮放送局」でアナウンサーとして働いている平安南道出身の李主日(イ・ジュイル)さん(42)は韓国入りして8年になるが、韓国定着の困難さを、こう嘆く。
「物価は猛スピードで上がっているのに、脱北者への生活支援金や医療保障制度は削減される一方だ。また、韓国人は北出身者を異邦人と考える傾向が強いので、社会に溶け込むのは簡単ではありません」
かつて総額3600ウォン(約250万円)支払われていた生活支援金である定着金は今では2000万ウォン(約140万円)に減額されている。
韓国で最近、ちょっとした騒ぎになっているのが、脱北者たちの「韓国脱出」の急増である。米政府系放送のボイス・オブ・アメリカによると、2007年、英国に難民申請した脱北者は415人に達し、うち130人が難民認定されたのだが、そのほとんどは、いったん韓国入りして韓国籍を取得した人たちであった。
難民受け入れに寛容なノルウェーにもこれまで72人の脱北者が難民申請をしたが、その多くが韓国入りを果たした人たちであったため、認定を受けたのは7人にとどまっている。
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