内部記者が撮った! 北朝鮮最新事情 1
写真 チャン・ジョンギル  解説 石丸次郎

金正日総書記の重病説が世界を駆け巡り、後継者問題や体制動揺がにわかに議論されるようになった北朝鮮。やはり気になるのは、その内部がいったいどうなっているのかだ。
それを写真で撮ってきた北朝鮮の男がいる。
彼の名はチャン・ジョンギル(張正吉:仮名)。

彼が命がけの撮影を敢行したのは、2008年7月終わりから10月9日にかけてで、場所は首都平壌市郊外の江東郡。カット数は全部で250あまりに及ぶ。
スチール写真で、庶民の日常をこれほど赤裸々に撮ったのは非常に珍しい。
チャン・ジョンギルは平安南道に住む40代の男性で、普段は機械関連の職場に勤める労働者だ。

かねてから彼には『リムジンガン』のために、最近の食糧事情の調査を依頼していた。
10月後半、国境の川・豆満江を渡って中国に出て来たと連絡があり、急きょ延辺朝鮮族自治州に会いに行き、写真を受け取った。
たとえプロカメラマンの写真であっても、外国人の撮影した北朝鮮は、どれも同じような場所の似たようなものばかりだった。外部の人間が訪れることができるのはごく限られた見栄えの良い場所だけだし、さらに案内員という名の監視が四六時中張り付くため、庶民の日常に接近するのはどうやっても不可能だったからだ。

チャン・ジョンギルが撮影したものは、まさに北朝鮮の人間にしか絶対に撮れない写真だが、それにしてもよく撮ったものである。恐ろしくなかったのか?
「周囲の目を気にしながら、さっと撮ったら長居は無用、一目散にその場を立ち去ります。やっぱりシャッターを押す時はドキドキしますよ」と撮影した彼は言う。

彼はまだジャーナリストの卵ではあるけれども、将来、誰も見たことのない北朝鮮を撮って大スクープをものにするかもしれない大きな可能性を秘めている。

祖国の姿を写真で伝えることを自覚した北朝鮮人のフォトジャーナリストの誕生を祝したい。

◆痩せ細る兵士(撮影日:2008年9月某日 場所:平壌市郊外江東郡某所)
今年は春先から食糧事情が悪化。軍部隊への供給も細り、訓練や作業を中止するほどだったと言う。

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ぞろぞろとトウモロコシを盗みに向う若い朝鮮人民軍兵士たち。
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