〈解説〉住宅闇市場と横行する不正腐敗 4(リュウ・ギョンウォン)
住宅闇取引に暗躍するブローカー
次に住宅の闇購入にどのような手続きが必要で、それに伴ってどのような不正が行われるのかを見てみよう(相互交換ではなく新規購入の過程を説明することで、これらについて重複することなしに説明できよう)。
そもそも国家住宅の割り当てを受けること自体、住民にとっては「夢のまた夢」である。
除隊して故郷へ帰って来た人民軍の将校や、新しい配置先に転勤して来た保安員(警察)のような核心階層住民であっても、最近は国家住宅の配当を受けることがほとんどできなくなった。
現在、朝鮮で住宅が必要な者は、闇市場を通じて、直接あるいは間接的に「金で」国家住宅を購入するしかないのだ。
外国では、朝鮮の各都市の街頭にあって、食べ物や雑貨や衣服を売る非合法な空間だけを闇市場だと考えているようだが、それは正しくない。モノだけでなく、非合法に不動産や情報が売買される目に見えないマーケットも、やはり闇市場なのである。
形式ばかりの配給制のおかげで朝鮮には「広告」という概念がないため、住宅を買うにあたって最初に突き当たる壁は、住宅販売の情報入手が簡単でないことだ。
今から二〇年前の一九八七年、私は咸興(ハムン)市会上(フェサン)区域会陽(フェヤン)にあるバスの終点で、ある労働者が停留所に貼った小さな紙切れを見たことがある。私の記憶に間違いがなければ、その紙切れにはこう書いてあった。
――通勤がとても不便なので家を交換したいと思います。希望する場所は沙浦(サポ)区域興徳(フンドク)洞。同意する方は下の住所までお知らせ下さい。会上区域会陽洞三三班、チェ○○――
現在、人民たちの間で経済活動への意欲が高まっているのに朝鮮の経済が立ち直ることができないでいる原因の一つが、「広告は資本主義」という政治的タブーを打ち出していることにある。
国家は経済情報を独占し、一般住民の情報への自由なアクセスを厳しく統制する立場を変えようとしないのである。
一般の広告が許されないのに、「闇」取引である国家住宅の売買広告を出せるわけがない。とにかく朝鮮では、常に買いたい者が積極的に動くしかないのである。
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