[柳本通彦] 台湾海峡天氣晴朗なれど No72~「Xデー」その6
【かつてオシドリ夫婦とも称された陳水扁夫妻。妻の交通事故を政治迫害と称して、選挙に利用した。以来「迫害」は彼の常套文句になった。また妻への負い目が、総統官邸での妻の銭ゲバぶりを黙認することになったのか】
4億、7億、19億とかいうとんでもない数字が飛び交っている。官邸に運び込まれた現金である。
単位は元。円高元安が進行しているいまなら、ちょうど三倍していただければ日本円になる勘定。すなわち、一億元は三億円。
いまは次々に経済人が特捜に呼び出されては、証言を続けているところだ。
この週末、七億の現金の出し入れを告白した証券会社のおばさんが自殺未遂をはかる。台湾は千元札が最高なので、これだけの現ナマを詰めると800キロ、トランクに25個分になるという。こんなものが女性の手で持ち運びできるのか。
と思っていると、陳総統夫人の弁護士は、いやいや2000万元だったと反論。しかし、たとえ2000万元だったとしても、当時のレートでは7000万円。ずいぶん金銭感覚が麻痺した話である。どうも事あるごとに、総統夫人に現金を貢ぐということが、すっかり財界の常識になっていたような気配である。
そのほかスイスに七億元があるのはわかっている。これは先日総統夫人が特捜の指定する口座に振り込むことを了承したという。一定の罪を認めた一定の妥協である。
ほかにも足し算していくと、数十億単位の金の行方がわからない。疑われているのは、日本。彼らの息子夫妻、そしてシンデレラ夫妻は幾度も日本に出向いており、ずいぶん前から疑惑の目で見られていた。
香港やシンガポールの当局は、台湾の要請に応えて、彼らのカネの流れを示す資料を特捜に提供しているが、日本政府はこれを拒否しているという。日本には土地などを含めて時価百億元単位の資産が隠されているというが、果たしてどうなのだろうか。
その日本から財界のプリンスが台湾に帰ってきた。辜仲諒という、台湾五大財閥の御曹司。彼の母親が在日華僑であることから、彼はその縁で日本に滞在していた。
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