逃亡生活に終止符を打って、自家用飛行機!で台北に戻り、手錠をかけられて特捜の捜査に応じ、十二時間後、一億元!の保釈金を払って保釈された。彼は、少なくとも一億とか二億のカネを官邸に届けたほか、陳水扁一家の重要な疑惑を証言したといわれている。特捜はVIP待遇で彼を遇した。
この「辜」という一家は、台湾関係者なら誰でも知っている台湾最大級の財閥一家である。その財産の規模が重要なのではない。問題はその歴史である。
この男の曾爺さんの世代 (辜顯榮ら) は、台湾割譲直後から大日本帝国にすりよって私腹を肥やし、最後は貴族院議員にまで登りつめた。戦後は爺さんたちの世代 (辜振甫ら)。
一転蒋介石と密接な関係をもち、国民党独裁体制下巨富を築き、李登輝時代には、台湾を代表して中国側との交渉に当たったりもした。この辜一族の後継者の一人とも目された辜仲諒前中國信託副董事長が、このたび民進党の陳水扁総統に現ナマを送り届けていたことを明らかにしたのである。
彼の父親辜濂松 (辜振甫の甥) は、馬英九政権の経済界代表役として、今回のAPECにも参加している存在。その父親が日本の息子を諭して帰国させ、すべてをしゃべらせることで、彼らは彼らなりに、はっきり民進党時代にけりをつけたものといえる。
さまざまな人たちを巻き込みながら、捜査は進んでいる。陳水扁は12月10日頃に起訴される見込みで、八百ページに及ぶ起訴状が起草中だという。
ご本人はハンガーストライキをやめて、拘置所で手記を執筆中。「獄中対話」というタイトルで出版されるという。懲りない人だ。
中国からの「お年玉」、トワントワン、ユエンユエンの二頭のパンダは今月中に台湾に到着する見通しで、台北市立動物園では受け入れ準備を万全の体制で進めている。
備考:日本で活躍中のエコノミスト・リチャード・クー(野村総研主席研究員)の本名は、辜朝明。その父親の辜寛敏は、辜振甫の異母兄弟。辜寛敏は兄たちとは袂を分かって日本で台湾独立運動を続けていた。