サハラーヒー氏の指摘どおり、テヘラン証券取引所の株価は2008年7月半ばに13000近い高値を記録し、それはちょうど7月11日に原油価格が147ドル50セントの史上最高値をつけたのと連動している。その後、テヘランの株価は原油価格の下落を追うように、完全に右肩下がりで急落していった。これは確かに日経平均ともダウ平均とも連動した動きではない。
世界金融危機へのイラン政府の対応が鈍いのも、こうした経緯を踏まえてのことかもしれない。
年が明け、1月も終わりに近づいた現在、テヘラン証券取引所の株価指数は8500あたりを低迷している。しかし、政府による支援策も、具体的な対応策もいまだに何一つ発表されていない。
先日テヘランで、イラン各地の商工会議所の会頭や経済の専門家らが集まり、金融危機の影響と対策について話し合う会議が行われた。この会議では、金融危機の影響によって国内で20万人が新たに失業したと報告され、政府の無策を非難する声が上がった。
しかし、失業率、インフレ率ともに20パーセントを超えるイランでは、失業者が20万人増えたところで、全体的な失業率にわずか数パーセントが上乗せされるに過ぎない。社会に不安が広がっているわけでも、経営破綻する会社が激増しているわけでもない。
長年にわたる高い失業率とインフレ率という、もともとこの国にある問題が、世界金融危機の影響をも飲み込んでしまっているかのようである。
とは言え、石油価格のこの低迷は、それ以上の価格水準を見越して来年度の開発予算を組んでいた政府にとって、頭の痛い問題だ。さらに、このまま世界的不況が続き、石油需要の低迷が続けば、その影響は確実にイラン国内の生産部門にも現れ始める。再選を目指すアフマディネジャード大統領は、6月の選挙に備え、その対策を十分に練っておいた方が良いと思うのだが......。