工場視察中の金正日の後ろに「党機関」の実力者だった延亨黙(ヨン・ヒョンムク、右の眼鏡姿)が控えている。(わが民族同士HPより)
工場視察中の金正日の後ろに「党機関」の実力者だった延亨黙(ヨン・ヒョンムク、右の眼鏡姿)が控えている。(わが民族同士HPより)

 

我が国の経済動向 16
「党機関」の「経済指導」
石丸次郎:政治はどのように「経済指導」しているのか、現状を聞かせてほしい。
ケ・ミョンビン:まず、国家規模での「経済指導」を見てみよう。
外部にも知られているように、我が国で経済を指導するのは「党機関」である。

ここで私は「党機関」と「党」という単語は区別して使いたい。
「党機関」とは、「党」の仮面を被って不正腐敗を繰り返す現在の労働党や官僚機構のことを言う。
「党」とは、本来、党員で構成される民主主義的な政治団体を指すものだ。現在、朝鮮では政党としての「党」は事実上、機能していない。
他の社会分野に対するのと同様、「党機関」は、経済分野についても政策を提示し、党員に対する生活指導、幹部任命、規約、機構、組織等に関する権限を牛耳っている。

これは、「共同所有」という看板を掲げる国家経済の、実質的支配者であることを意味する。つまり、支配者は「党」ではなく「党機関」なのだ。
国家経済の実権を握る者による最も露骨な(経済支配の)形が、「党機関」で直接運営する商業、つまり中央党の外貨調達ビジネスだ。
執権党が商売を行うというと低俗に聞こえるかも知れないが、外貨調達を目的とする貿易会社は、はっきりと「党機関」に所属している。

朝鮮の幹部たちは皆知っていることだが、国内のもっともオイシイ経済利権とその手段は「党機関」が一手に掌握している。
配給途絶によって国家経済が破綻したことは、すでに明らかだ。経済のあらゆる権限を「党機関」が掌握していたのだから、その責任の所在が「党機関」にあるのは当然である。

ところが、政治組織である「党機関」は、「経済指導」を誤っても法的責任は問われないまま、権限行使のみを行うことになっている。つまり「党機関」 は「焚口の近くにいる姑」(注1)的な存在なのだ。
「党機関」の主要な「政治的指導」とは、つまるところ(企業の)経営に対する「人事」(的指導)であり、これはほかならぬ行政業務への介入・代行である。

中国は、党が企業に干渉するといった構造を改革することで、企業経済を成功させた。これはわれわれが見習うべき姿である。
(つづく)

注1 オンドル部屋で焚口近くのいちばん暖かいところに陣取って土間にある台所をのぞきこみ、嫁の一挙手一投足にいちいち口を出す姑のこと。自分では働かず、働いている人に意地の悪いことばかり言う憎まれ者の比喩に使う。

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