私には、出国することの確約と確実な滞在先を求められるということは、うちの国にはできるだけ入ってくれるなというメッセージのようすら感じられた。同時に、ビザ取得条件が、私が訪れたすべての大使館で徹底して同条件だった(大使館によってビザ取得の条件が変わる国は少なくない)ことから、統制が取れた国なのだろうなとも想像できた。
ラゴスの治安が悪いことは本当だろう。ラゴスは経済の首都と言われており、オイルマネーを持つ人々を狙った強盗が頻発している模様。産油関連企業はナイジェリア沿岸部に集中している一方、沿岸部ほどに、突出した富を持った人々の集まる町・地域はなさそうだ。よって、富を狙った犯罪は南部のみ。相手に危害を加えること自体を目的とした争いごとの噂話を聞いたことはなく、部族間対立や抗争のような事態は起こっていないだろう。
一般的に、空路でナイジェリアを訪れる際にはラゴスに到着する。そもそも犯罪率の高いラゴスをほとんどの外国人が訪れることになり、外国人を狙った犯罪はますます増加。ほとんどの外国人がラゴスを訪れるという前提に立つと、さらなる犯罪増加とマイナスイメージの流出は政府にとって望ましくないため、確実に安全な滞在をする外国人のみにビザを発行。
なんにせよ、国でひとくくりにして「ナイジェリア人の国民性が暴力的」なんてことは絶対にない。
22歳だった私は、こんな仮説を立ててみた。
このとき私は、地中海より陸路南下を続けている最中。ナイジェリアのみ空路入国することも考えたが、紹介状を得る手段が無い。ナイジェリアを迂回または飛び越すことは不可能ではないものの、あまりに費用がかさむ。
また、私が訪れたどのナイジェリア大使館の人々も穏やかで丁寧な応対をしてくれたことから、ナイジェリアの印象は私にとっては良くなるばかり。なんとか、ナイジェリアを訪れてみたかった。
ここでだめならあきらめようと、先の仮説を胸に食い下がってみるつもりで、私はトーゴのナイジェリア大使館に、再び向かった。
(続く)