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【行進を終え、終点のアザディー広場でくつろぐ人々。バックはアザディータワー】(撮影:大村一朗)
【行進を終え、終点のアザディー広場でくつろぐ人々。バックはアザディータワー】(撮影:大村一朗)

2月10日、イラン・イスラム共和国は、イスラム革命勝利記念日を迎えた。今年2009年のこの日は、革命勝利30周年の節目でもある。
毎年この日は祝日とされ、政府の呼びかけによって、イラン全土で市民による行進が行なわれる。テヘランでは、朝9時半、事前に指定された市内8箇所から行進が開始され、市内西部にあるアザディー(自由)広場を目指す。

午前10時半、行進のメインストリートとなるアザディー通りは、アザディー広場を目指す群集で埋まっていた。
歩道には様々な団体のブースや、テレビとラジオ各局のステージが設けられ、様々な催しが行なわれている。歌謡ショーあり、著名な聖職者の演説あり、人気のある子供向け番組の収録が行なわれているステージの前には、一目見ようと集まった親子連れで押し合いへし合いになっている。

消防署の前を通りかかれば、レンジャー部隊がビルの壁面の垂直降下を披露している。驚いたのは、12歳くらいの少女の一団が、揃いの衣装でステージの上で踊りを披露していることだ。厳格なこの宗教国家で、その光景はあまりにまぶしく、華やかなものだった。

路肩には様々な露店が地面に品物を並べ、ちょっとしたバザールになっている。こうした露店は数年前までは存在しなかったという。衣服や日用雑貨の露店とともに、イランの冬の風物詩、そら豆の煮付けや砂糖大根の煮込みの屋台もあちこちに見られ、市民はそれらを冷やかしながらアザディー広場へとゆっくり、楽しそうにそぞろ歩いている。

イランでは、政府が市民にデモ行進を呼びかけることは少なくない。ラマザン月最後の金曜日に行なわれる「世界ゴッツの日」の行進や、様々な記念日、また、昨年末から22日間続いたガザ戦争の際にも、政府の呼びかけで、ガザを支持する大々的なデモ行進が行なわれた。

こうした官製デモの本来の目的は、イラン国民がいかに団結しているかを内外に示すことだ。そのために、保守層の市民や官公庁の職員、就学児童、各宗教団体などに大規模な動員がかけられる。実際、今日もアザディー通りの一本裏通りには、官製デモお決まりの動員用バスがずらりと駐車してあった。テヘラン南部の貧困層や、近郊の村落からも大勢の人たちがかき集められてきたのだろう。

そして、路肩に並ぶあちこちのブースでは、お菓子や飲み物、ナッツ類がばら撒かれるように彼らに振舞われる。
官製デモとはそういうものであり、革命記念日の行進はその最たるものとして、私はこれまで関心もなければ、足を運んだこともなかった。
ところが今日、思いがけず目にしたものは、官製デモの枠には収まりきらない規模と楽しさ、そして市民の笑顔だった。

シーア派イマームたちの殉教を弔う追悼行事などの゛悲しいお祭り゛や、拳を突き上げ、物騒なスローガンを叫びまくる抗議デモがやたらと多いイランでは、こんなに晴れやかな、お祭りらしいお祭りは珍しい。それに、政府の動員力だけでこれだけの人が集まるとも到底思えない。
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