「街の様子も人の暮らしも平常通りで変わったところはないけれども、幹部も労働者も、将軍様が建国記念日に登場しなかったことについて、いろいろ噂し始めています。これから政治にいろいろ変化があるかもしれないと、『次の時代』のことを言い始める人もいます」
Cさんの電話での報告は、北朝鮮内部の人々が、金正日の「異変発生」という事態を既に敏感に感じており、早くも今後の政治の行方に関心が向きつつあることを示唆していた。
リムジンガンに掲載するために撮影した写真を携えて、九月中旬にシン・ドソク記者が豆満江を越えて中国に出てきた。北朝鮮はこれからどうなっていくと思うか、見解を尋ねた。
「一九九四年に金日成が死んだ時は、空が落ちてきたような衝撃がありました。『ああ、首領様も死ぬのか』と。
一方で、うんざりするような耐乏生活がずっと続いていたので、あと一〇年経った頃には世の中も変わっているだろう、良くなっているだろうと思ってたけれど、一〇年経った今は、むしろ前よりどんどん悪くなった。金正日が倒れたのだったら、もう、いくらなんでも世の中変わってもらわないと。
密告が怖くてなかなか口には出せませんが、私だけでなくほとんどの人はそう思っているはずです。
中国だって毛沢東が死んでようやく文化大革命が終わったでしょう? 朝鮮の中は、これから変化を期待するムードがどんどん高まっていくと思います」
(つづく)
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