[柳本通彦] 台湾海峡天氣晴朗なれど No;75  「独房」

090227_yanagimoto_DSC4322.jpg【陳水扁著獄中記表紙。十字架、すなわち自分を台湾の生贄にたとえる。発売とともに書店のベストセラーに】

旧正月をはさんでしばらく中断しました。最近の台湾の様子をいくつか整理します。
・ ニュース報道の中心はやはり陳水扁とその一家。その犯罪の重さもさることながら、嫁や婿も含めれば六人の家族それぞれが発するオーラは見ていて飽きさせないものがある。いずれも歴史の主人公に値する人たちである。

田中角栄元首相自身は面白くても、その家族がこれだけの役者ぞろいとはとても思えない。さすがに台湾之子であり、台湾之家族である。さて、前総統は起訴のあといったんは保釈されたものの、世論の反発厳しく結局は収監され現在独房生活まる二か月に及んでいる。

先日審理が始まり彼の姿が久々に関係者の目にさらされたが、ぼさぼさ頭の憔悴しきった姿は世の人を驚かせた。「李登輝は共産党から金をもらってる」など意味不明の言葉を口走りつつ、涙ながらに家へ帰してくれと裁判官に訴えたという。

食をとらなくなったおりには妻の呉淑珍が拘置所に見舞い、せめて水だけでも飲むように勧めたり、弁護士が櫛を差し入れ、拘置所に前総統にふさわしい尊厳ある対応を求めたりした。これらを見ての我が家の反応も真っ二つ。

大統領を二期、そして台北市長まで務めた人を長期にわたって独房に入れておくのは酷ではないかという私に対して奥方は、誰であろうと罪をあがなうのは当然。しかもあの人たちが「台湾」に対し犯した罪は尋常ならざるものと反論する。おそらく台湾中の世論も同じく二分されているだろう。

彼らの現在の住まいは市内の新築高層億ション( 台湾ドルで一億元以上 )である。どのようにして手に入れたのか、その資金源も不明、そもそも賃貸なのか所有なのかさえ、よくわからないうえに、櫛や鏡さえない独房からいきなり億ションだとすると。その開きはあまりに大きい。
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