イラン・イラク戦争でのサッダーム・フセイン政権への支援、イランの在外資産の凍結、1988年の乗客290名を乗せたイラン航空機撃墜、イランの反体制テロ組織への支援、クリントン政権以来続くイラン制裁法、その他、数知れない敵対行為とイランの発展への妨害、そして、ブッシュ政権以来、イランを「悪の枢軸」、「テロ支援国家」として侮辱してきたことについて触れ、アメリカは一体何を改めたのかと非難した。
実際、オバマ大統領は、イランに年間4千万ドル以上の投資を行なった企業にアメリカ国内で制裁を課すイラン自由支援法を、わずか1週間前に延長したばかりである。
オバマ大統領はビデオメッセージの中でさらに、「合衆国は、イランに国際社会の中で自らにふさわしい地位を築いてほしいし、イランにはそうする権利があると考えるが、この権利は実質的な責任を伴うものであり、テロ(への支援)や武力(核兵器)を介してこうした地位を手に入れるべきではなく、イランの国家と文明の真の偉大さを示すのものは平和的な行動である」と述べており、これはオバマ大統領が、イランを悪の枢軸としたブッシュ政権と基本的には何ら変わらぬ先入観をイランに対して抱いていることを示している。
イランの体制指導部は、革命後の30年間、常にアメリカの時の政権と対峙し、アメリカという国を見続けてきた。それに比べ、オバマ大統領は一体何年イランという国と向き合ってきたのか。大統領に当選してみたら、イランとの関係改善が望ましい政策だと気付いた。ただそれだけでイランに和解を呼びかけたとしたら、イランの指導部にとっては噴飯ものだろう。30年の重み、30年の確執、それらすべてを抱きかかえてきたイランの指導部の心を動かすには、目に見える行動を一つ一つ示してゆく以外にない。
いずれにせよ、イラン大統領選挙をわずか3ヵ月後に控えた今、オバマ大統領がイランの体制指導部にこのようなメッセージを送ったことは、保守派こそが交渉相手であるとアメリカが考えていることの表れであり、イランの改革派にとっては面白くない結果と言えるかもしれない。再出馬を決めているアフマディネジャード大統領にとっては、今後の対米関係の進展具合によって、国内経済の失点を多少なりとも挽回する機会となる得るかもしれない。