大村一朗のテヘランつぶやき日記~ノウルーズを前に 2009/03/16
イランにはイラン暦、イスラム暦、西暦の三つの暦があり、宗教行事などはイスラム暦、その他の国民的行事や年間スケジュールはイラン独自の暦であるイラン暦に沿って行なわれる。イラン暦は西暦と同じ太陽暦で、1年は365日、そして12の月がある。ただ、西暦と違うのは、元旦が春分の日だという点だ。
3月(西暦)に入ると、テヘラン市内5箇所に新春バザールと呼ばれる特設展示場がオープンし、年末の買出し客で賑わう。イランでは、洋服、日用雑貨、学用品などを新年に合わせて新調する習慣がある。1年間使い古したものを処分し、真新しいものに囲まれて新年を迎えるのは、春の生命の再生を祝うイラン正月ノウルーズ(「新しい日」の意味)の習慣とも合致する。
遊園地や動物園が併設されたエラム公園という、テヘラン市内西部にある大きな公園に、この新春バザール特設会場の一つが設けられていた。
衣服や靴などを売るテント式のバザールが、数百メートルにわたって延々と続き、その周囲に、ありとあらゆる日曜雑貨、ノウルーズに欠かせないナッツ類やお菓子、さらにケバブサンドやスープなどを売る軽食の屋台が広がっている。
平日にもかかわらず、まっすぐ前を歩けないほどの人出だ。実はほんの数日前、テヘラン市発行の新聞紙上で、今年の新春バザールで売られる衣料品は、品質と価格の点で、あえてバザールで買う利点はないようだと批判されていた。確かに一見した限り、衣料品に限ってはそれほど安いようには思えない。しかし、なにぶん出店数が多いので、気に入ったものを見つけることは出来るかもしれない。
夫婦で買い物に来ていた30代の男性は、このバザールはどんな商品も外より20パーセントは安いはずだと教えてくれた。彼は正月用の各種ナッツ類を何キロも買い込んでいたので、ナッツ売り場の値段を見てみると、確かに2割ほど安い。衣類は定価がないので外より安いか断定できないが、その他の日用雑貨は確かに安く、私はボックスティッシュや缶詰、お菓子などを大量に購入した。
インフレが20パーセントを超えるイランでは、基本的に日持ちのするものは大量にまとめ買いをする。今日のように安い買い物が出来る日はなおさらだ。正月用はもちろん、こうしたまとめ買いが目的でこのバザールに足を運んでいる人も少なくないようだった。
こうした買い物の光景は新春バザールの中だけに見られるものではない。イランでは、この年末の数日間は、どんなビジネスであれ、1年で最大の利益を上げるチャンスと言われているほどなのだ。
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