第4章
戦後日本の経済大国化のなかで
人間を使い捨てにする発想
この海部・橋本発言のなかにある「公的規制の緩和」「企業と労働に関する諸制度の改革」は、聞こえはいいが、実は大変な問題を含んでいる。
1980年代後半に始まり、90年代から加速した労働法制の規制緩和による歪みにつながっているのである。
成果主義と一体化して労働時間のなし崩し的延長を招く裁量労働制の適用業務の拡大、女性の残業や深夜労働を規制してきた労働基準法の女子保護規定の撤廃、非正規雇用の増加をもたらした労働者派遣法改定による派遣業務の拡大と原則自由化。
それらは「企業と労働に関する諸制度の改革」の名のもとにおこなわれてきた。
今日、不安定な非正規雇用の労働者を中心にワーキングプアと格差社会の問題が広がっている。
一方、正規雇用が減らされたことで正社員の仕事量がさらに増え、長時間・過密労働を強いられ、ストレスも増大している。
そのため、過労死や過労自殺の問題、過労自殺につながる鬱病など心の病の問題はますます深刻化している。
このような問題、歪みが起こっている背景には、「人的資源」の発想、「人的資源」活用論があるのではないか。
派遣労働者など非正規雇用の労働者は、必要な時にだけ安いコストで調達できる「部品」のような労働力、「人的資源」として扱われている。
正社員は「大競争時代」を勝ち抜ける能力と成果を求められ、長時間・過密労働に耐えられる労働力、「人的資源」として位置づけられている。
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