雇用構造の改変を方向づけたのが、1995年に日経連(2002年に経団連と合併し日本経団連に)が出した提言『新時代の「日本的経営」』である。
それは従来の終身雇用制・年功序列型賃金制を変え、雇用の多様化・流動化と人件費削減を目指すものだった。
労働者を、1.長期蓄積能力活用型グループ、2.高度専門能力活用型グループ、3.雇用柔軟型グループに分けて、次のように位置づけた。
1.は管理職・総合職・技術部門の基幹社員で終身雇用
2.は企画・営業などの専門職で契約社員や派遣社員など有期雇用
3.は一般職でパートやアルバイトや派遣社員
2.と3.のグループは昇給も退職金も企業年金もない非正規雇用である。必要な時に必要な人数だけ雇い、要らなくなったら契約を打ち切れ、しかも人件費が安くつくという、企業にとっては使い勝手のいい労働力扱いだ。
こうして雇用の多様化・流動化が進んだ結果、国税庁の調査によると、年収200万円以下の労働者がほぼ1000万人に達している。働いても生計を維持するのが困難なワーキングプアの増加は社会問題化した。

正社員は仕事量が増え、長時間・過密労働と成果主義導入によるストレスから、過労死や過労自殺の問題も深刻化している。
一方で、人件費削減でコストダウンに成功し、国際競争力をつけた大企業は輸出を増やし、過去最高の利益をあげた。
2007年度『経済財政白書』によると、資本金10億円以上の大企業製造業の一人当たり役員報酬の水準は、一人当たり従業員給与の5倍近くにまで増えた。
日本社会はもはや単なる格差社会というよりも、貧困層と一部の富裕層に両極化してきている。

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