「お前らが泥棒を捕まえてくれるっていうのか。庶民から金を巻き上げることしか頭にないくせに。泥棒と変わらないじゃないか。お前さんは人民のための保安員か、誰のための保安員なんだ」

泥棒の相棒扱いされ、すっかり頭に血が上った保安員は、罵声を浴びせかけたが、おばあさんはひるまなかった。
「お前さんたちは、制服を見せびらかすことが大事なのか? 仕事をしっかりやることが大事なのか?」
ご主人が生きていたときは、ひたすら新婦のようにおしとやかだった老婆が、年を忘れて制服姿の保安員を相手にやりあった。手厳しい言葉はまだまだ終わりそうにない。

「正直、今の時代に人民のために頑張って働くような役人がいるかい?
ちっぽけでも職責がつくやつらは、誰でもみんなそれを利用して私服を肥やすことしか頭にないじゃないか。庶民が生きようが死のうが、自分の利益を追っかけるばかりでさ。

保安員だって威張り散らしているのは、自分の食い扶持のためじゃないか。何か民衆のためにしてることはあるのか!」
老婆が、一歩も引かないということが分かると、その保安員は喧嘩しても損だと思ったのか、尻尾を巻いて逃げていった。
保安員の姿が見えなくなるとおばあさんは、ようやく胸を撫で下ろした。保安員の前では、怖いもの知らずのトラのような勢いを見せていた彼女だったが、保安員がいなくなるといつもの年寄りの姿に戻った。

その後、その保安員は、二度とそのおばあさんが警備詰所の入口の前に陣取って商売するのを、とやかく言うことはなかった。
おばあさんが、そこに陣取って目を光らせ始めてから、町内では白昼に泥棒に入られることがなくなった。
今では、近所の年寄りたちが安心して家を空けて警備詰所前にやってきては、このおばあさんと世間話をして帰るそうだ。

国家から賃金をもらって「肩章の星を光らせて威張る」保安員たちが守れなかった町は今、平穏になった。
おばあさんは今日も、扉が壊れたままの古い警備詰所の前で、手作りのパンを細々と売りながら、町内を見守っている。
資料提供 シム・ウィチョン
二〇〇八年一〇月
(整理 チェ・ジニ)

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