大村一朗のテヘランつぶやき日記~人種差別撤廃会議に思う 2009/04/21
イラン国内のメディアは国営部門に偏っている。テレビもラジオも国営しか存在せず、数多く発行されている新聞も、国からの認可が必要だ。
こうした官製メディアにも、ジャーナリズムの最低限のルールは存在し、有るものを無いと書いたり、失敗を成功と報じたりするようなことはない。つまり、嘘を報じることはないという信頼だけは国民の間に浸透しており、そのため、国民の世論を形成する一定の影響力を持っている。
しかし、イランに住み、この国の報道に日々接していると、ときどき世界情勢が分からなくなるときがある。彼らは確かに嘘はつかない。だが、その報道には意図的な誇張や偏りがかなりあるからだ。
昨年暮れから今年1月にかけての22日間に渡る、イスラエルによるガザ攻撃は、イスラエルの国際的イメージを失墜させた。
世界中で反イスラエルデモが起き、この攻撃を指揮したイスラエル政府の首脳や軍の高官らを戦争犯罪人として国際刑事裁判所で裁くべきだとする意見が、イスラム諸国の間で高まった。こうした動きは、国連をはじめとする国際機関や、著名な国際弁護士の働きかけで、イスラム諸国以外にも広まり、最近ではEUの高官からも、イスラエルとの関係見直しを求める発言が相次いだ。イスラエルの国際的孤立はもはや留まるところを知らず、アメリカがイランに関係改善を求めるに至って、その傾向は決定的なものとなった……。
イラン国内の報道に接している私は、そう思い込んでいた。
ところが、昨日4月20日の、スイス・ジュネーブで行なわれた第2回国連人種差別撤廃会議での出来事は、国際社会の現実が、それほどこれまでとは変わっていないことを見せ付けた。イランのアフマディネジャード大統領が演説を行った際、彼がイスラエルを人種差別的な政権だと非難するや、ヨーロッパ20数カ国の代表団が一斉に退席したのだ。一つの国の代表団は3~5人で構成されているため、その退席劇は騒然としたものとなった。
そもそも、この国連人種差別撤廃会議は、2001年に第1回会議が南アフリカ共和国のダーバンで行なわれた際にも、パレスチナにおけるイスラエルの人種差別が取り上げられ、アメリカとイスラエルが途中退席している。今回の会議でも、この会議がイスラエル非難の場と化すことを恐れたアメリカとイスラエル、さらにドイツ、イタリア、オランダ、ポーランド、ニュージーランドなどが、当初からこの会議への不参加を決めていた。
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