第5章
「人的資源」活用論と雇用の流動化と労務統制
国企業の利益にも
雇用の流動化の背景には、米国の財界と政府の意向もある。
米国側は日米財界人会議や日米投資イニシアティブなどを通じて、労働法制の規制緩和を求めてきた。
労使間の解雇紛争での復職に替わる金銭解決制(金銭を払えば解雇が容易になる)の導入、労働時間規制の適用除外の拡大(残業代なしの長時間労働をもたらすホワイトカラー・エグゼンプション)、労働者派遣法の規制緩和などで、それは日本の財界も同じように求めていることだ。
2007年11月の第44回日米財界人会議の共同声明にも、
「日本経済がよりグローバル化するにつれ、時代のニーズに合わない労働法制のままでは、日本企業の競争力を損なうだけではなく、グローバル企業の投資対象国としての日本の魅力にも影響を及ぼす」とあるように、
対日投資を増やし、日本の市場に進出している米国の多国籍企業・金融資本の利益がしっかりと考えられているのである。
日本での米国企業の利益を守るための団体が、在日米国商工会議所(ACCJ)だ。約1400社を代表する会員からなる、日本で最大の外資系経済団体である。
そのホームページによると、活動は「グローバルに事業を展開する会員企業の利益の保護と日米間のビジネスについての最新情報の提供」などを中心にしている。
具体的には、「メンバー企業の日本での事業の成功に影響を及ぼす、あるいはその存在を左右し得るような日米両国政府の動静を監視し、見解を発表。日本政府へも積極的に働きかけ、市場アクセスの改善、外国直接投資受け入れ拡大、意義ある規制緩和の実行」などを求めている。
「日米の主要議員や政府高官と意見交換」し、「議員への個別訪問」もおこなう。日本経団連など財界団体とも交流する。
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