派遣会社によるマージン(一般的に3割~4割)について、「中間搾取だと思いませんか?」とたずねると、
「派遣会社が仕事を集めてくるわけだから、マージンがあるのも仕方ないんでしょうね」という意見だった。
3人目は28歳の男性で、テレビ番組制作会社の契約社員としてアシスタント・ディレクターをしながら、月に5回ほど日雇い派遣で働いているという。
「契約社員の給料は20万円です。借金を返さないといけないので、この仕事も4年くらいしています。主に倉庫での荷物の積み降ろしや引っ越し作業です。登録しているのはグッドウィルですが、営業停止前に決まっていた仕事ならできるそうです。日当は6000円から7000円。今日は倉庫の仕事で、午前9時から午後5時か6時までです」

笑みを浮かべながら話す青年は、以前、港湾地区らしき所の倉庫で働いたことにふれると、荷崩れに巻き込まれるのではないかなど危険を感じたと真剣な表情になった。

「船から降ろされたコンテナがトラックで運ばれてきて、倉庫に横づけされます。ぼくらはコンテナの荷物をフォークリフトのパレット(荷置き台)に乗せたり、倉庫に積んだりする作業をしました。危険を伴うし、重労働で、夏は特にきつかったです。港湾での作業は派遣の禁止業務なんですが、グッドウィルの違法派遣が問題化する前でしたからね。当時はわかりません。幸い怪我などはしませんでしたが」
ビル建築工事といい、港湾地区の倉庫といい、未経験の派遣労働者に安全教育も施さず、安全対策もなされぬまま、危険な現場に違法派遣という実態がある。

深刻な事故も起きている。各種報道によれば、2007年2月、江東区青海の三井倉庫の構内で、グッドウィルの派遣労働者が荷崩れによって左膝骨折の重傷を負った。貨物船から降ろした重さ25キロの粉詰め脱脂粉乳をフォークリフトのパレットに積み上げる作業中のことだった。
グッドウィルから東和リースに派遣されていた労働者は、三井倉庫の下請けの笹田組に違法な二重派遣をされていた。本人は二重派遣のことも、港湾作業への派遣が違法なことも知らなかったという。

また、建物の解体現場で粉塵やアスベストが舞うなか、正社員は防塵用マスクをしていたのに、派遣労働者はコンビニで普通のマスクを買うのを勧められただけ、という事例も伝えられている。

「日雇い派遣は体がきつければ休めるし、自由が効きます。でも、やりたくてやっている人は少ないでしょう。リストラで職を失った中高年の人たちと、同じ現場で働くこともありますが、昼休みに話を聞くと、生活が大変そうです。僕はいまの会社に勤めて3年目です。契約は1年更新で、あと1年半くらいでなんとか正社員になれる見込みなんです」

彼はがんばって正社員を目指したいと強調した。~つづく~
(文中敬称略)

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